「例えば、営業店を通じて、どこがヒアリングの対象企業になっているのかを調べたり、あるいは当該企業との接触を含めて、回答内容に影響を与えるようなアクションは、くれぐれも回避していただくようお願いする」
金融庁幹部は、地域金融機関の首脳との会合の場でこう釘を刺した。
地域金融機関が戦々恐々としている。金融庁が企業に対する金融機関の融資姿勢や支援姿勢の実態を把握するため、直接、企業へのヒアリングを行っているのだ。これまでも金融庁が企業にヒアリングを行うことはあったが、サンプリング程度のものだった。しかし、現在行われているヒアリングは大々的だ。地域金融機関の企業取引の実態を明らかにし、今後の金融行政のベースにする狙いがある。
安倍晋三政権が誕生しアベノミクスがスタートしてから、金融庁は金融機関に対して企業融資を積極的に推進するように求めてきた。融資に際しては、担保や保証に依存する財務偏重ではなく、事業性を評価して融資を行うように要請、このために金融検査マニュアルまで改定し、一部不良債権の解釈まで変更したほど。それでも、なかなか変化しない金融機関の融資姿勢に業を煮やした金融庁は、企業に直接ヒアリングを行い始めた。
ヒアリングでは、(1)企業の事業性評価に対する金融機関の取り組み、(2)金融機関と企業のコミュニケーションの状況、(3)金融機関からの融資や経営支援などが企業の経営改善に役立っているのか、といったことを聴取しているようだ。
もちろん、今後の金融機関との取引関係を踏まえて、どの企業にヒアリングを行ったのか、その内容がどのようなものだったのかについては、金融機関サイドには明らかにならないようにしている。いわば、地域金融機関にとっては、匿名で金融機関の評価を聞かれているようなもので、気が気ではない。
金融機関の融資姿勢は変わるか
「融資の審査スピードが遅い」「融資結果を早く教えてほしい」といった企業の声は、よくあることだが、「実際に現地も見ないで融資の審査を行っている」などという指摘は、金融機関にとって耳の痛いところだろう。