特にひどいのは、仕事の分業化・モジュール化(細分化)と、下請け・孫請け・曽孫請けといったケースで、一体どこに責任の所在があるのか曖昧になる点である。そしてこの問題は、原因追及をすればするほどさまざまな魑魅魍魎の世界に引き込まれる傾向にある。「嘘をつく」「誤魔化す」「騙す」「隠す」「脅す」「手抜きをする」「無視する」「目をつむる」に加え、「雑」「鈍感」「無神経」「いい加減」「乱暴」「抑圧」「虐め」「事務的」「機械的」など、怪しげに感じる事態に直面する。
さらにその基盤となる要素を追及すると、ほとんどが「質の悪いコストダウン」に到達する。
「コストを下げて品質低下」「スピードアップを図り物事を雑にする」「効率化を図り付加価値喪失」などはその典型的な共通要素であり、バブル経済崩壊以降、年を追って増え続けている現象である。
筆者が約30年にわたり企業における「不満足度調査」の実施を通じて得た要件は数多いが、ここでお示ししていることはその一端である。
なぜ顧客の不満が大切なのか
不満足度調査とは、顧客から率直な生の声を聞くために開発した独自のノウハウを有する調査・分析手法だが、およそ3つの目的がある。
その1つ目は、問題が起こる前にいち早くその原因を解消すること(リスクマネジメント)と、問題発生後の対応(クライシスマネジメント)である。いわば「改善」活動である。
2つ目は、現在は良いが、さらに良くする「改良」活動にある。
世の中の多くの調査結果を見ると、現在の顧客意識は平均して80点。5段階評価の「4=良い・満足」にマークする人たちが約80%を示すデータである。以前は「3=普通・どちらでもない」が平均であったが、現在は「普通=不満・悪い」となる。「良い・満足」が世間相場だからである。だから80点以上を取らない限り現状維持すらおぼつかない時代にある。
3つ目は、顧客の「グチ」「困っていること」「不満」などの「潜在ニーズ」の解消である。新製品・新サービス・新システム・新設備・人間力開発などに活用され、その結果は顧客から高い評価を受け業績向上に貢献している。いわば「革新」活動である。
不満足度調査は名だたる企業が導入しており、そうした企業では顧客からのクレーム、トラブル、事故・事件に該当するようなことがほとんど発生しなくなるばかりか、顧客は日頃の企業の真摯な姿勢や取り組みを評価し、これが業績向上に貢献し続けている。
(文=武田哲男/武田マネジメントシステムス代表取締役)