国の債務残高は1100兆円を超えており、国の財政は厳しいが、その主な原因は恒常化する財政赤字と高齢化の伴う社会保障費の膨張である。内閣府「中長期の経済財政に関する試算」(2019年7月版、ベースラインケース)によると、2019年度における国の財政収支(対GDP)は4.1%の赤字、地方の財政収支(対GDP)は概ね0%の黒字となっている。また、2028年度における国の財政収支(対GDP)は2.8%の赤字、地方の財政収支(対GDP)は概ね0.5%の黒字と予測する。
このため、マクロ的にみると、国の財政と比較し、地方財政に余裕があるのは確かだが、各地方が直面する人口減少や高齢化のスピードなどは大きく異なるため、ミクロ的には、厳しい財政状況に直面する自治体も増えてきている。この象徴の一つとして挙げられるのが、2019年4月に財政危機の宣言を行った新潟県であろう。
新潟県は、県の貯金に当たる「財源対策的基金」が2021年度末にも枯渇する可能性を明らかにし、2019年10月下旬に正式決定した「行財政改革行動計画」に従って、財政再建に取り組み始めている。新潟県の財政が危機的な状況に陥った主な原因は、借金返済である公債費の実負担増と、今後も増加が見込まれる社会保障関係経費や県立病院への繰出金の負担増である。
しかし、このような厳しい状況は、新潟県のみの問題とは限らず、他の自治体にもいずれ到来する可能性が高い。というのも、国土交通省が2014年7月に公表した「国土のグランドデザイン2050~対流促進型国土の形成~」では、我が国の国土のうち2050年の人口が2010年と比較して半分以下となる地点(全国を「1平方kmごとの地点」で見る)が、現在の居住地域の6割以上(=44%+19%)を占めることを明らかにしているからである。域内の人口が5割以上も減少すれば、その自治体の税収が大幅に減少する恐れがある一方、高齢化で社会保障関係経費には増加圧力がかかる。
深刻さ増す公立病院の赤字拡大
地方の負担分である社会保障関係経費の推移をマクロ的に確認してみよう。図表1は、国立社会保障・人口問題研究所の「社会保障費用統計(平成29年度)」から作成したものだが、1970年度から2017年度において、社会保障給付費は直線的に増加し続けている。この増分のうち、地方負担分は赤色の部分であり、1990年度に2.69兆円であった地方負担分は、2017年度に16.61兆円にまで膨張している。高齢化に伴う社会保障給付費の増加は今後も続くため、それは国の財政のみでなく、地方財政も直撃するはずだ。