地域医療構想において、この中核を担うことを期待されるのが、公立病院や公的医療機関であり、民間医療機関では限界がある高度・先端医療の提供のほか、高度急性期・急性期機能や不採算部分、過疎地等の医療提供などである。
また、地域医療構想の推進や医療提供の質的向上を図る観点から、総務省も2015年3月、「新たな公立病院改革ガイドライン」を通知し、例えば、公立病院の運営費に関する地方交付税措置につき、その算定基礎を従来の「許可病床数」から「稼働病床数」に見直している。このような見直しは、医療施設の最適配置の実現に資することが期待されたが、「稼働病床数」の定義が「最も多く入院患者を収容した時点で使用した病床数」となってしまい、患者延べ数から算出する「病床利用率」と乖離し、再編統合を促す誘因が骨抜きになるといった問題も明らかになっている(図表2)。
医療システム堅持のために再編統合の検討を
このような状況のなか、改革に向けた検討の参考情報として、厚生労働省が2019年9月26日開催の「地域医療構想に関するワーキンググループ」で公表したのが「公立・公的医療機関等の診療実績データの分析結果」である。
この分析結果によると、公立病院・公的病院の25%超に相当する全国424の病院が、診療実績が少なく、非効率な状況であり、再編統合の検討が必要であることを示唆する。この424再編リストは、厚生労働省が強引なかたちで再編統合を促すものではない。重要なことは、地方財政にも限界があるなか、必要な医療システムを堅持するため、この分析結果を参考に、政治や我々がどのような具体的対応を行うか冷静に検討することあるはずだ。
なお、最近の内閣府・世論調査によると、「複数の医療スタッフで業務を分担しながら24時間診療が行えるよう、いくつかの医療機関を統廃合することにより、医療スタッフを集めるという考えに賛成か、それとも反対か」との問に、賛成が約7割、反対が約3割という結果も出ている(図表3)。「政令指定都市」「中都市「小都市」「町村」といったセグメントでいずれもほぼ似通った結果になっているが、人口減少のスピードがより速い地域が多いと思われる「町村」が(若干だが)最も賛成の比率が高いという結果も興味深い。各々の公立病院等の地理的位置関係は、厚生労働省「地域医療構想に関するワーキンググループ」(2019年6月21日開催)で示された「構想区域の公立・公的病院等を中心とした機能分化・連携の状況」で確認できるため、こちらの資料も利用しながら、医療施設の最適配置の実現と連携などについての議論を深めることが望まれる。
(文=小黒一正/法政大学教授)