減給処分は疑問、停職でもおかしくない
また、半日分の減給という大学側の処分について、正当性はあるのだろうか。
「本件のような悪質性が高く、重大な結果が発生していると思われる教授の行為について、平均賃金の半日分の減給という懲戒処分が妥当かについては、疑問が残ります。
同リリースでは、処分量定の決定過程は記載されていませんが、一例として、人事院の懲戒処分の指針では、処分量定の決定に当たっては、非違行為の態様および結果を考慮する旨を規定しています。同指針からすると、助教が流産してしまった本件のようなケースにおいては、停職などのより重大な懲戒処分であっても、決して不当ではないと考えられます。
なお、本件は国立大学のケースでしたが、同様の事実関係であれば、当事者が『会社の従業員と、パワハラを行う上司』であったとしても、従業員が上司および会社に対して、損害賠償請求などを行えるものと考えられます。
そして、従業員がパワハラにより自殺したケースなど、被害者自身が損害賠償請求を行うことが困難な場合は、被害者の家族が、上司や会社に対して請求を行うことも可能であると考えられます」(渡部弁護士)
「ブラック企業」や「社内うつ」が社会問題化する中、国立大学でこういった問題が発生したこと、さらにその処分が“大甘”だったことも、世間の衝撃を倍加させている。
ちなみに、山梨大学といえば、15年ノーベル生理学・医学賞受賞を受賞した大村智・北里大特別栄誉教授の母校としても知られており、同大のホームページにはトップに「祝 ノーベル医学生理学賞受賞 大村智先生(本学卒業生) おめでとうございます」のメッセージが掲げられている。先人の栄誉に傷をつけるような行為を、教授自ら行ったという点でも、問題視されるべきだろう。
(文=編集部、協力=弁護士法人AVANCE LEGAL GROUP LPC・渡部貴之弁護士)