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最終的にアイカーン氏は18.50ドルにまで引き上げることを提案、ブリヂストン側は昨年12月29日に「追加提案は行わない」と公表して、ペップ買収を断念した。買収価格が当初計画から2割程度上回ったためだ。もともとブリヂストンがペップの買収を決断したきっかけは、業績が悪化していたペップ側からの株式売却提案だった。全米販売ネットワークと業績から採算を確保できる水準として、1000億円で買収することを決めた。
結局、アイカーン氏の登場による買収価格の上昇を受け、「全米のネットワークは魅力的だが、投資を回収できないと判断した」(ブリヂストン関係者)と見られる。
苦い経験
ブリヂストンは1988年に米国事業を強化するため、ファイアストンとの資本提携で合意した後、伊ピレリがこれに対抗するように買収を公表した。このため、ブリヂストンはファイアストンを買収する方針に転換。最終的にその買収には成功したものの、買収価格はピレリが最初に提案した価格の1.38倍にまで膨れ上がった。当時のブリヂストンのトップは「独の販売網拡大には長い時間と労力がかかり、ファイアストンをピレリに取られたらと永久にチャンスを失うと考え、時間を買ったのです」と後に述べている。
しかし、ファイアストンは買収後も業績悪化で赤字を垂れ流し、フォード車のリコール問題も発生するなど、長期間ブリヂストンのお荷物となった。
同じ過ちを繰り返したくなかったブリヂストン首脳陣は、今回再び大きな負担になる可能性もあったペップの買収からあっさりと手を引いた。代わりに、米国でコントロールできるタイヤ小売店ネットワークの拡充という大きな課題は残ったままだ。ブリヂストンとしては、迫りくるミシュランを突き放すためにも、米国事業を強化する新たな戦略の練り直しを迫られることは必至。
ペップ買収見送りが将来のブリヂストンにとって「吉」と出るか、「凶」と出るのか。業界関係者は、今後の同社の米国戦略に関する次の一手に注目している。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)
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