国際戦略経営研究学会の戦略経営・理論・実践研究会が1月20日に開催され、出席した。
今回の発表者は佐藤博樹・中央大学戦略経営研究科(ビジネススクール)教授で、報告テーマは『仕事と介護の両立支援:介入研究の結果から』だった。
佐藤教授は出自が社会学で、ビジネススクール教授としては人事管理論がご専門。経済産業省の「新・ダイバーシティ経営企業100選」の運営委員長や中央大学の「ワーク・ライフ・バランス&多様性推進・研究プロジェクト」の代表なども務められている、当該分野で権威とされている学者である。
学会での報告なので、発表は佐藤教授のグループが実際に調査をして得られたファクトの報告、分析というかたちをとった。私が出席した理由は、テーマそのものがまさにコンカレント(現代的)で、多くの企業と幹部個人たちがすでに直面している問題についての調査、報告だと思ったからだ。はたして、その期待は裏切られなかった。
介護する男性社員が急増
佐藤教授の報告によると、主な介護者(介護に当たる家族)で男性の割合は2001年の調査では23.6%だったが、10年には30.6%と急増している。そして、この増加傾向は今後とも継続するとされる。理由としては、女性配偶者にも親がいるので女性はそちらの介護を優先と考える。そもそも女性も就業している割合が増えてきている、などだ。
被介護者、つまり老親のほうを分析すると、75歳を過ぎると要支援・要介護の割合が高くなる。ところが、まさにこの年齢層の親に対処すべき子供の年代は40代後半から始まる。40代後半から50代、そして定年までというと、多くの企業で女性より男性が幹部社員として登用されている割合が圧倒的に多い。私はそれがいいと考えているわけではない)。
介護の負担感は、育児のそれよりも大きいそうだ。つまり、育児の手のかかり方は成長とともに少なくなるし、プロセスも予想できる。ところが、介護の場合は親が存命な限り先が見えない。配偶者の大きな関与や手助けを得られない社員が持つ負担感は男女共に大きい。
佐藤教授の発表後に私がコメントしたのは、「企業にとって、介護は育児よりも大きな経営課題となってきた」ということだ。具体的に次のように経験を語った。