16年のビール市場も落ち込む見通しで、国内市場の先行きは暗い。そのため大手酒類メーカーは海外に活路を求めている。大勝負に出たのがサントリーHDだ。14年、1兆6000億円を投じて米蒸留酒大手ビーム(現ビームサントリー)を買収し、海外事業を拡大。この買収で一気に世界3位の蒸留酒メーカーに躍り出た。ビール市場は世界的再編が進み、サントリーが世界的なプレーヤーになる余地はないが、蒸留酒はまだ食い込めるとみて、そこに活路を見いだしたのだ。
海外のビール会社の買収で先行しているのはキリンHDだ。09年に豪ビール2位のライオンネイサン(現ライオン)を3300億円で完全子会社にした。同年、フィリピンのビール最大手サンミゲルに1316億円出資して48%の株式を取得した。
失敗したM&A(合併・買収)もある。キリンHDは11年、ブラジル2位のビール会社、スキンカリオール(現ブラジルキリン)を3000億円で買収したが、ブラジルは世界首位インベブの牙城で価格競争に敗れた。
キリンHDは15年12月期連結決算でスキンカリオールの取得に伴って生じたのれん代の減損など1140億円を特別損失として計上。そのため、最終損益は従来予想の580億円の黒字から560億円の赤字に大幅に下方修正し、上場以来初の最終赤字に転落するとみられる。
欧米市場の開拓が課題
アサヒグループHDは、キリンHDやサントリーHDと比べ海外展開が遅れていた。アサヒグループHDは11年に980億円を投じニュージーランドの酒類大手、インディペンデント・リカーを買収したが、売上高に占める海外事業の比率は1割強にとどまっている。キリンHDとサントリーHDは3割台である。
アサヒグループHDはこれまでオセアニアと東南アジアを攻めてきたが、今後は手薄だった欧米市場を強化する。米飲料大手、トーキングレインを買収する方針で、買収額は500億円規模になる見通しだ。
アサヒグループHDにとって最大のM&A案件になるのが、英ビール大手SAB傘下の欧州老舗ビール2社の買収だ。早くも16年の勝負どころに差し掛かっている。
(文=編集部)