ゆうちょ銀行の貯金金利も9日に引き下げられた。日本全国にくまなく店舗があるゆうちょ銀行が金利を下げると、貯金している多くの人に広く影響が及ぶ。出し入れしやすい、一般の銀行の普通預金にあたる「通常貯金」の金利は0.03%から0.02%となった。1カ月~4年の定期貯金の金利も0.035~0.05%だったのが0.025%に引き下げられる。
以前は大手銀行よりも高く設定されていたが、マイナス金利導入の影響を受け、3メガバンクと同一水準になる。つまり、ゆうちょ銀行に預けたほうが得という状況がなくなるのだ。
保有する国債のうち、満期まで1年以内のものが13兆円と国債全体の14%を占める。再び国債に投資すると現在より低い利回りになる。ゆうちょ銀行も国債に投資せずに日銀の当座預金に預けると、マイナス金利で0.1%の手数料を取られることになる。利ザヤの縮小は避けられない。
わずか3カ月で初値割れ
郵政グループ3社は株式公開に当たって野村證券を中心とする大幹事団が形成された。地方の小さな証券会社まで加わりオールジャパン体制で上場を支えた。「郵便局を運営するグループの株式が公開される」ということで個人投資家が殺到、活況を呈した。株式市場になじみがなかった初心者を株式市場に呼び込む役割を果たしたわけだ。
だが、ゆうちょ銀行株はマイナス金利の悪影響をモロに受け、2月3日に1296円まで下落。初値1680円、公開価格1450円を大きく割り込み、投資した全員が含み損を抱える状況に陥った。
NTT株の悪夢を思い出させる出来事だ。NTT上場では、第一次売出として、政府保有の株式が119.7万円で売却された。上場日の87年2月9日には売買が成立せず、2月10日に160万円の初値を付けた。NTT株は人気が高く、4月22日には318万円の最高値を記録した。初値の160万円を割り込むのは2年後の89年3月のことだった。
ところが、ゆうちょ銀行はわずか3カ月で初値も公開価格も割り込んだ。あまりに早すぎる崩落ぶりである。
日本郵政、かんぽ生命保険も上場来安値を更新
日本郵政は2月8日には上場来安値の1381円まで売り込まれ、上場初日につけた初値1631円はおろか公開価格の1400円すら下回った。日本郵政の上場来高値は1999円だから、下落率は30%を超えた。
3社の中では市場からの資金の吸収が最も少なかったかんぽ生命保険も、2月8日に2280円の上場来安値に沈んだ。
政府は郵政3社の株式売却資金、総額4兆円を東日本大震災の復興財源に充てる計画だ。昨年11月の上場時に得た資金は1兆4362億円。持ち株会社の日本郵政の西室泰三社長は「できるだけ早く、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式の追加売却をしたい」と言っている。追加売却する分については、資金の使途の縛りがないので「大型M&A(合併・買収)に使いたい」との思惑があるようだ。追加の株式売却には多くの視線が注がれるだろう。
ゆうちょ銀行は銀行株の中でもっともマイナス金利の影響が大きい銘柄といわれている。持ち株会社の日本郵政が公開価格を下回ったダメージは大きい。西室社長のシナリオ通りには事が進まない可能性が高い。
(文=編集部)