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小林敬幸「ビジネスのホント」

日本企業がダメになった本質的原因…生き残りの必須条件はリーン、デザイン、オープン

文=小林敬幸/『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』著者
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 ただ、なんでもかんでもオープンというよりも、関係者の安心と利便性を維持するために最低限の参加障壁をつくり一部クローズにする「オープン・クローズ」が最近の動きである。インターネット勃興期のようになんでも「フラット」「フリー」「オープン」を標榜するアナーキーなイデオロギーに固執しない。

 大型コンピューターの時代には、IBMがハードウェアもソフトウェアもすべて自ら供給していた。これは、クローズ戦略だ。パソコンのアプリケーションは、マイクロソフトのOS上で動くアプリケーションを誰も規制しないオープン戦略であった。一方で、アップルiPhoneのアプリケーションは、誰でも供給できるが同社の認証をとらないと配布できない。これは、オープン・クローズ戦略だ。

 ほかにも、オープン・クローズ的発想のものとして、「お友達」承認した者同士のコミュニケーションを図るSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)。基本機能は無料で楽しめるけれども、付加価値の高いサービスは有料になるビジネス。コアの技術は独自に管理しながら、それを利用する技術を敷居の低いコンソーシアムで普及しようとするものなどがある。

 このように、最近の新規事業は、ネット勃興期の「フリー、フラット、オープン」信仰から次のステップに移っている。

20→21世紀のビジネスに転換

 以上のようなリーン・スタートアップ、デザイン思考、オープン・イノベーションは、どれも万能兵器でもないし、まったく新しい手法でもない。

 たとえば、リーンなどは、江戸時代の商人が「やってみなはれ」とすでにやっていたことだろう。また、エレベーターの待ち時間を感じさせないために鏡を置く話などは、40年以上前に『頭の体操』という本に紹介されていたと記憶している。

 こうした昔からある発想が、今にわかに注目を浴びているのは、時代のほうがこの手法に適合してきて、改めて効果が浮き彫りになってきたからにほかならない。つまり20世紀のビジネスでは、故障しない自動車、カラーのテレビ、スピードの速い鉄道と、目標は容易に間違いなく明確に設定できる。そこで、その目標をより早く、より安く実現するための競争を必死に行う目標遂行競争であり、知の深化の競争でもあった。

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

1962年生まれ。1986年東京大学法学部卒業後、2016年までの30年間、三井物産株式会社に勤務。「お台場の観覧車」、ライフネット生命保険の起業、リクルート社との資本業務提携などを担当。著書に『ビジネスをつくる仕事』(講談社現代新書)、『自分の頭で判断する技術』(角川書店)など。現在、日系大手メーカーに勤務しIoT領域における新規事業を担当。

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