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小林敬幸「ビジネスのホント」

日本企業がダメになった本質的原因…生き残りの必須条件はリーン、デザイン、オープン

文=小林敬幸/『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』著者
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 しかし21世紀のビジネスは、目標を探索して、よい目標を創造的に設定する競争であり、知の探索の競争になってきた。また、製品の目標が決まりさえすれば、それを実現する製品は、デジタル製造技術の進歩により比較的容易に生産可能となる。SNSのLINEにしてもFacebookにしても、現時点の製品仕様を示しさえすれば、どこのソフトウェア技術者でもつくることができるだろう。これらは仕様の設定こそが難しく、かつ素晴らしかったのだ。
 
 日本は20世紀、追いつき型近代化であったため、先を走る欧米の姿を見てそのまま簡単に目標を設定することができた。そして目標遂行にあまりにうまく適応して追いついてしまってからは、目標探索に向いていない組織原理で目標を探索し、追いつき型の高成長に馴染んだ社会制度で成熟型の低成長に適応しなければならかった。こうした時代の変化が、新規事業の手法の変化の背景にある。

競争優位を保てるのは長くても10年程度

 また、現代は変化そのものがきわめて早い。変化が早く将来が予測不可能の上に、全体の成長率が低いので、競争が激しいハイパーコンペティション(超競争)の時代である。長期的な競争優位を保てる位置取りをするというのが米経営学者マイケル・ポーターのポジションニング戦略だったが、現代では、1つの事業で競争優位を保てるのは長くても10年程度になっている。

 そうなると、自前主義の1社でこつこつと苦労してせっかく得たポジションが効果を発揮する期間は、とても短い。熟考して提示したミッション・ビジョン・バリューやコアコンピタンスがたちまち通用しなくなる。それくらいなら、オープン・イノベーション戦略をとって、協力者と共に得られる利益を分けながら、さっさと開発したほうがいい。

 せっかく創造力を発揮して目標を設定しても すぐに最適な目標を変えなければならない。あるひとつの「ビジネスモデル」にこだわっていると、たちまちにして事業が成り立たなくなる。Facebookも、ユーザーの利用方法を常々分析しながら、日々刻々と仕様を変えていっている。たとえば、広告を導入してからも、ユーザーのページ遷移などを分析しながら、ユーザーが目障りに感じないように広告の出し方や量を変えている。

 結局、繰り返しになるが、現代は目標設定が困難な一方、目標の遂行は比較的容易で、変化が早く、全体の成長率が低く、超競争の時代になっている。リーン、デザイン、オープンという言葉がたとえ廃れようとも、こうした時代はしばらく続くだろう。
(文=小林敬幸/『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』著者)

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

1962年生まれ。1986年東京大学法学部卒業後、2016年までの30年間、三井物産株式会社に勤務。「お台場の観覧車」、ライフネット生命保険の起業、リクルート社との資本業務提携などを担当。著書に『ビジネスをつくる仕事』(講談社現代新書)、『自分の頭で判断する技術』(角川書店)など。現在、日系大手メーカーに勤務しIoT領域における新規事業を担当。

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