ヤフー、楽天のFX事業本格参入で激化するネット金融業界の舞台裏
ヤフーがサイバーエージェントFXの全株式を取得して100%の完全子会社にするのは、経営権を取得して金融事業に本格参入を決めたということだ。
今、FX業界は風雲急を告げている。レバレッジ(証拠金倍率)の規制が強化されたからだ。金融庁は11年8月、個人向けにレバレッジの上限を50倍から25倍以下とした。投資の魅力が薄れ個人投資家のFX離れが進んだ。顧客の減少は、逆に投資家の囲い込みに発展した。値下げ競争が過熱し収益の圧迫を招いた。
その結果、経営が苦しくなった中小業者を大手が買収するFX業界の再編が始まった。
口火を切ったのがGMOクリックホールディングス。取引高首位のGMOクリック証券を傘下にもつ同社は12年9月、伊藤忠商事系でジャスダックに上場している6位のFXプライムをTOB(株式公開買い付け)で子会社にした。
取引高2位のDMM.com証券は同年9月、外為ジャパンのFX事業を買収した。
矢野経済研究所の調べによるとFX事業の12年12月の口座数は1位が外為ドットコムの35.5万口座、2位がDMM.com証券の28.1万口座、3位がGMOクリック証券の26.2万口座、サイバーエージェントFXは21.8万口座で第4位だ。
月間取扱高では1位はGMOクリック証券の32.2兆円、2位はDMM.com証券の30.0兆円、サイバーエージェントFXは15.1兆円で3位である。
GMOと子会社にしたFXプライムを単純合算すると口座数は39.1万口座で業界トップ。月間取扱高は35.5兆円となりライバル各社に大差をつけた。
FX市場に経営体力で勝るネット証券大手が参入してきた意味は大きい。12年5月、SBIFXトレードが営業を開始した。北尾吉孝氏が率いるSBIホールディングスのFX専業の会社だ。SBIグループではネット証券のSBI証券とネット銀行の住信SBIネット銀行のサービスの1つとしてFX取引をやってきたが、拡大の余地があると判断してFX専業の会社を立ち上げた。
北尾氏は、ネット証券に参入するや、またたくまに市場を席巻した豪腕の持ち主である。12年11月のネット証券各社の月間株式売買代金では1位はSBI証券の3.1兆円。2位の楽天証券(1.4兆円)の2.2倍だ。北尾氏は「FXでも業界トップを目指す」と鼻息は荒い。
後発のSBIFXトレードは他社と差別化を図るため「手数料0円」「業界最狭水準のスプレッド」を柱に据えた。スプレッドとは売値と買値の差で事実上の手数料にあたる。ドル・円取引で他社が0.4銭のところを0.19銭でスタートした。