ホンダが役員を大幅に刷新する人事を発表した。グローバル販売600万台体制を掲げた伊東孝紳前社長が築いてきた経営体制を一新、最大の課題だった四輪車開発体制も大幅に変更することになった。昨年6月に社長に就任してから約1年、八郷隆弘社長体制がやっと本格稼働する。
ホンダは、6月以降の役員体制を大幅に刷新する。池史彦会長、岩村哲夫副社長執行役員の代表権を持つ2人が揃って退任するほか、開発部門のトップだった福尾幸一取締役専務執行役員も退任する。池会長が退任後、会長ポストは空席とする。八郷社長のお目付け役のような存在だった代表権を持つ2人が退任することで、八郷社長が自身で経営を主導する裁量が一気に広がる。
昇格では、中国の統括責任者である倉石誠司常務執行役員が代表取締役副社長執行役員に就任する。八郷社長は「中国で初となる100万台の販売を達成した優秀な人材であり、業務にも幅広く精通している」と評価する。八郷社長は、社長就任の直前まで中国で生産統括責任者を務めており、倉石氏はいわば子飼いの部下だ。
さらに、業務部門の役員も大幅に刷新する。国内販売を担当していた峯川尚専務執行役員、開発部門トップだった福尾幸一専務執行役員など、伊東前社長時代の役員を一掃する。
今回の目玉人事のひとりとして、プロパーで同社初の女性執行役員となる鈴木麻子氏は、ホンダの中国合弁会社東風本田汽車の総経理を務める中国閥で、今後は日本本部営業企画部を担当する。八郷社長が中国時代を共にした信用できる身近な人材を手元に集めているようにも映る。
錦の旗を下ろす
役員人事とともに、組織体制も見直す。最大の課題となっているのが開発部門だ。ホンダは、伊東前社長が2016年度に世界販売600万台の目標を掲げ、日本、北米、中国、アジア・大洋州、欧州、南米の世界6極それぞれが現地で開発から購買、生産、販売までを完結させる世界6極体制を進めてきた。
しかし「身の丈を超えたスピードと規模で各地域のニーズを考慮した商品投入に追われた結果、日本のサポート業務が増えて、研究開発の現場の工数と負荷が増大」(八郷社長)した。これによって、たとえばスモールカー「フィット」で発売開始から1年間で5回リコール(回収・無償修理)するなど、品質問題が顕在化、ヒット車不足で販売が上向かない状態から脱せないでいる。