新型コロナウイルス感染症の拡大は、世界的な課題になっている大気中の二酸化窒素汚染にも影響を及ぼしているようだ。英国BBCインターネット版は29日、『Coronavirus: Nasa images show China pollution clear amid slowdown』(コロナウイルス:中国の大気汚染が劇的に低下 NASA(米航空宇宙局)衛星画像で判明)と題する記事を公開した。記事ではNASAの「今年1月1~20日」「2月10~25日」の2つの期間の衛星画像を取り上げ、上記期間の大気中の二酸化窒素汚染濃度の分布を比較した。
北京、重慶、香港、上海などで大気汚染が劇的に低下
1月の画像では、北京市周辺、重慶市、香港市、上海市は汚染濃度の高い黄色や赤色の分布で覆われていたが、2月にはきれいになくなっていた。BBCは「製造業者がコロナウイルスを封じ込めようと作業を中止したため、中国の工場活動が減少している。NASAの科学者は自動車や産業施設から放出される二酸化窒素の濃度の低下は、武漢市の発生源の近くで最初に明らかになったが、その後全国に広がったと述べた」と報じている。
とはいえ、中国の産業のスタイルが変わったわけではなく、あくまでウイルスという外発的な要因で一時的に低下したのにすぎない。それは裏を返せば、放出される汚染物質がここまで急激に低下するほど、操業中止が深刻化しているということだ。
「中国の工場と連絡が取れない」
東京都内の服飾用品の仲卸業者は次のように語る。
「先月中旬くらいから、四川省成都市の織物工場や縫製工場とまったく連絡が取れず、危機的な状況が続いています。すでに在庫はなく、つてをたどってベトナムなどの業者を紹介してもらって対応を検討していますが、東南アジア諸国も日本との取引を敬遠する傾向が出始めているようです。つまり、我々も中国の事業者と同じく『いつ操業が中止になってもおかしくない』と見られ始めているのではないでしょうか。
新型コロナで日本はボロボロですが、向こうも復帰しているように見えません。大手企業のように、ロジスティクスまで含めたサプライチェーンをアジア全域で構築できているのならまだしも、我々のような中小企業にはそんな体力も機動力もありません」
日本国内の混乱の影響もあってか、中国国内に関する報道は減少傾向にある。しかし、少なくとも中国で科学的に根拠のある「コロナ封じ込め成功」の報告はない。つまり、中国もまた混乱の渦中なのだ。日中で共倒れしなければいいのだが果たして――。
(文=編集部)