ところが、電力小売りの完全自由化を控え、発電事業に本格的に乗り出したことをきっかけに資金繰りが悪化したことが経営破綻の原因になった。
発電所建設を目的に設立した子会社の日本新電力は14年10月、佐賀県伊万里市の県営工業団地に大規模なバイオマス(生物資源)発電所を建設すると発表した。事業費は144億円で5万キロワット分の発電プラントを整備し、17年3月の稼働を目指した。稼働3年後の20年3月に年間84億円の売り上げを計画していた。
この、総額144億円の事業費が重荷となり、15年5月には再生可能エネルギーの賦課金を納付できなかった。その後も、電力の仕入れ先への未払いがたびたび発生。16年2月25日に、新電力の登録申請を取り下げ、電力小売業からの撤退を表明した。ブームに乗って新電力に参入した結果のお粗末な倒産だった。
とはいえ、新規参入したのは日本ロジテックだけではない。200社以上の新電力が4月以降、電力小売事業者の登録を済ませている。第2、第3のロジテックが出る可能性は否定できない。
自治体新電力に漂う暗雲
電力小売りの全面自由化は、自治体にとってまたとないビジネスチャンスと受け止められた。人口の減少で税収減に悩む自治体が次々と新電力を設立している。新電力は地方創生の目玉となった感さえある。
福岡県みやま市が筑邦銀行などと共同出資して設立した地域新電力のみやまスマートエネルギーは4月から、家庭向けに電力を販売する。供給対象は同市内の1万4000世帯。料金は九州電力より平均2%ほど安く設定し、水道とセットにして月額50円値引く。
卸業者や市民の太陽光発電の余剰電力を買い取る。太陽光発電を主要エネルギーとした電力を地域で消費するというのが謳い文句だ。
鳥取市と鳥取ガスが共同で出資した新電力・とっとり市民電力は、伊藤忠エネクスと組み、4月から市民会館など公共施設に電気を供給する。家庭向けに販売することも検討している。電源は市などが出力2500キロワットの大規模太陽光発電所(メガソーラー)を持っており、電力の地産地消というビジネスモデルだ。
このように自治体が主導する新電力は各地に生まれているが、果たしてうまくいくのだろうか。民間事業として成立しにくい、ごみ焼却や水道事業ならまだしも、電気事業に自治体のような競争原理に弱い組織が参入して勝算はあるのか。価格競争に巻き込まれ、あっという間にギブアップする可能性が高い。
数年後には、自治体新電力の相次ぐ撤退の記事を読むことになるかもしれない。
(文=編集部)