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クックパッド、創業者の横暴で株主に多大な損失…批判ばかりで具体案示せず、上場企業失格

文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント

矜持を示した社外取締役

 穐田氏を社長に招聘してからは、佐野氏は世界展開事業に専念するとして取締役兼執行役についていた。

 株主総会直前の取締役会が3月22日に開かれ、佐野氏が執行役から外された。提言したのは社外取締役だとされる。佐野氏は現経営陣の批判を重ねているが、自らは具体的な方向をはっきり示さないなどの理由で執行役から外された、と報じられている。

 この動きにより、オーナーとしての佐野氏のプライドは大きく傷ついたのではないか。株主総会で多数派を得た直後の取締役会で、自らの執行役としての電撃復帰と穐田氏の社長からの更迭を実現したのだ。後任社長の岩田氏は、佐野氏が招聘してきた、前職がマッキンゼーのパートナー・コンサルタントだ。

上場などするな、一般投資家を巻き込むな

 さて、ここで改めて重要になってくるのは、「会社は誰の物か?」という冒頭の命題である。

 私の答えは、「株主のものだ」である。クックパッドの場合、佐野氏は最大株主を超えた実質オーナーなのだから何をしてもいい、ということになる。

 しかし、それはその会社がプライベート・カンパニーならば、ということなのだ。株式を公開して上場した以上、社会的責任がある。ほかにも投資家が存在するのだ。それらの一般株主は、短期的に株価15%下落という損失を被っている。逆の言い方をすれば、今回の佐野氏側による経営陣交代は市場の支持を得られなかった、市場とは社会ということでもある。佐野氏は、株式公開などすべきではなかった。

 自ら招請してきた穐田氏を更迭するのなら、なぜ自らがもう一度社長として先頭に立とうとしないのか、火中の栗を拾わないのか。古い話だが、ヤマハで天皇経営者だった故・川上源一氏は、外部から何人もの大物経営者を招聘してきては更迭するということを繰り返した。私に言わせればたちの悪い経営者だった。夢を抱いてクックパッドに着任したであろう岩田新社長の多幸を祈らずにはいられない。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)

※本連載記事が『間違いだらけのビジネス戦略』(クロスメディア・パブリッシング/山田修)として発売中です。

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ「企業再生経営者」と評される。実践的な経営戦略の立案指導が専門。「戦略カードとシナリオ・ライティング」で各自が戦略を創る「経営者ブートキャンプ第12期」が10月より開講。1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。国際経営戦略研究学会員。著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』(プレジデント社)、『MBA社長の「ロジカル・マネジメント」-私の方法』(講談社)ほか多数。
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