紫光集団は世界3位を目指す
昨年来、中国が世界の半導体企業を“爆買い”している(表1)。これは、中国が世界の約30%の半導体を消費しているにもかかわらず、自給率がたった12.8%しかないため、習近平国家主席が設立した「中国IC産業ファンド」(15兆円規模)を資金源として、中国企業が国家政策の一環として世界半導体企業を買い漁っているからである。
特に、その中心になっている紫光集団による爆買いは凄まじい。同社の趙偉国董事長は、2015年12月21日付日経新聞電子版のインタビューで次のように答えている。
「今後5年間で3000億元(約5.6兆円)を投じ、インテルとサムスン電子に次ぐ世界シェア3位を目指す」
「私(紫光集団)が半導体を強化する目的は三つある。(1)精華大で無線通信技術を学び、ITに興味があること、(2)中国の半導体が非常に弱いこと、(3)中国の投資家が半導体に熱中していることである」
「まずスマホ用プロセッサ、次にデジタル家電用SoC、そしてメモリに力を入れる。買収は、知的財産を合法的に、手っ取り早く手に入れる方法である」
このままの勢いで爆買いが進めば、本当に世界3位の半導体メーカーになってしまうかもしれない。その勢いは恐ろしいほどであると思っていたら、爆買いが頓挫し始めた。理由は何であろうか――。
中国の爆買いに待ったがかかる
紫光集団は昨年、約38億ドルを投じてHDDメーカーの米ウェスタンデジタル(WD)に15%出資することで合意していた。ところが、WDは米政府や企業の情報システム構築にかかわっているため、米国企業のM&Aを審査する対米外国投資委員会(CFIUS)が調査に入ることになったという。その結果として、紫光集団はWDへの出資を断念したらしい。
WDは、東芝と共同でNANDフラッシュメモリを開発・生産している米サンディスクを買収した。そのため、紫光集団がWDの筆頭株主になれば、東芝とサンディスクが共同開発したNANDの技術を入手できるはずだった。しかし、WDへの出資が見送られたため、NANDの技術は手に入らなくなった。
また紫光集団は昨年、半導体メモリ第3位の米マイクロン・テクノロジーに230億ドルの買収を持ちかけていた。この大型買収は世間の耳目を集めたが、当初から米規制当局による審査が問題になるだろうと見られていた。その結果、両社ともに正式発表はしていないが、マイクロンは買収提案を断ったと思われる。