坂本氏は「日本、台湾、中国で計1000人規模の技術者」を集め、中国人技術者に量産工場の立ち上げやDRAM量産を任せる計画なのかもしれない。しかし、数百人規模のチームワークが必要なプロセス開発や量産立ち上げは、中国人には無理だと考えられる。
しかし、賽は投げられた。目論み通りDRAM生産が軌道に乗るとは思えないが、技術者の募集と量産工場建設は進み始めているようだ。
中国XMCが3次元NAND工場建設へ
米国の半導体情報サイト「EE Times」によれば、中国のファンドリーXMC(Wuhan Xinxin Semiconductor Manufacturing)が今年3月末、3次元NANDフラッシュメモリの新工場の建設に着手すると発表した(3月28日)。同社は現在、NOR型フラッシュメモリを製造中で、ウエハ生産能力は月産約2万枚であると報道されているが、真偽は不明である。
さらに電子デバイス産業新聞によれば、「XMCが3次元NANDの試作に成功しており」(4月17日)、18年に3次元NANDの量産開始を目指し、総額2.7兆円を投じて月産20万枚のウエハを生産する計画であるという。
ここでも、サイノキングと同様に問題が2つある。
第1の問題は、XMCがどこから3次元NANDの技術を入手したのかということである。電子デバイス新聞は、「XMCが3次元NANDの試作に成功」と書いているが、真に受けるのは難しい。
なぜなら、現在NANDのプレーヤーは4社あるが、各社におけるNANDに占める3次元NANDの割合は、サムスン電子(40.8%)、SK Hynix(3.3%)、東芝・サンディスク(5.4%)、マイクロン・インテル(17.6%)となっている(前出EE Times記事より)。
13年7月に量産を宣言した東芝ですら、いまだに5.4%しか3次元NANDをつくることができていない。それほど、3次元NANDの製造は難しいのである。それゆえ、中国のファンドリーのXMCがいきなり自力で「3次元NANDの試作に成功」するとは考えにくい。
他方、調査会社DIGITIMES Researchの14年10月13日付レポートには、「米スパンション(Spansion)が3次元 NANDフラッシュメモリ技術をファンドリーの中国XMCに提供する」との記載があったが、これも疑わしい。
というのは、スパンションとは1993年に富士通と米AMDによる合弁会社として設立され、主としてNORフラッシュメモリの開発と生産を行っていた。しかし、NANDには実績がない。そして、業績不振により10年にスパンションは倒産している。そのような会社が、果たして5年程度で3次元NANDの開発を完成することができるのだろうか。