不動産や株式のバブル崩壊が伝えられる中国では、国際競争力が失われる中で、企業が財テクにいそしんでいたのも事実である。
日本企業も、バブル末期には不動産や株式をはじめ、さまざまな商品に投資を重ね、財テクにうつつを抜かしていた。中国もまったく同様で、資源をはじめとしたさまざまな商品取引において、非常に大きな買いポジションを保持していた。簡単にいえば、資源などを利用して投機行為を行っていたわけだ。
しかし、そういった中国の投機行為が減少したことが、世界的な資源バブル崩壊の大きな要因ともいわれている。中国では、深刻な実体経済の悪化に加え、不動産価格の下落や銀行の貸し渋り、貸し剥がしが短期間で一気に進む可能性が高い。
また、根本的な問題として、中国の経済構造も大きな課題をはらんでいる。中国の経済構造は「共産党独裁・自由主義経済」ともいうべき、非常にゆがんだものであり、自由経済と計画経済の“いいとこ取り”をしている状態だ。
しかし、バブル崩壊を受けて、いよいよ「計画経済か、自由経済か」という選択を迫られることになるだろう。例えば、自由経済化を進めた場合、中国政府はバブル崩壊を食い止めるすべを持っていない。計画経済に進んだ場合、国際ルールを無視した一方的な運用が可能になるため、企業の大量倒産を免れるなど、バブル崩壊のショックは緩やかなものになる。
「自由経済化=バブル崩壊の助長」「計画経済化=バブル崩壊の抑制」という基本構造になっているわけだ。しかし、中国経済が自由化されるということは、あり得るのだろうか。自由化というのは、金融面だけの問題ではない。経済の自由化とは「ヒト・モノ・カネ」の3つの要素が自由に移動できることであり、それらは市場原理に委ねるというのが原則である。
「ヒト・モノ・カネ」が自由に動けば、それに伴って情報など有形無形のさまざまな要素も動く。必然的に、政治も自由化せざるを得なくなるだろう。8月に、中国・天津市で発生した大規模爆発事故のニュースが世界を駆け巡った。あのニュースが大々的に報じられた背景には、天津が経済技術開発区であり、自由貿易試験区であったという要素がある。
天津の大爆発が大々的に報じられたワケ
中国では、何か事故が起きると、責任回避のために証拠を隠滅したり、情報を隠蔽するのが常である。しかし、天津には日本人をはじめとした外国人が多数存在していたため、情報隠蔽ができなかった。こういったことを鑑みると、自由化は中国共産党の現行体制を脅かすものであるともいえるだろう。