鉄の秋葉原
――270もある鉄関連の事業所は、具体的にどんなビジネスをしているのですか。
加藤 川上である製鉄所というか鉄メーカーからは、板はもちろんパイプや棒状鋼、H形鋼などさまざまな形状の鋼材が出てきます。それらを在庫として保管販売する流通機能があります。それから、ユーザーの使い勝手によりそれらの素材を切ったり、曲げたりする加工機能があります。
――団地内の工場はクレーンを使うので、とても天井が高いのですね。
加藤 そうです。また、各工場では対応している加工が異なることがあるので、互いに加工委託しているケースもあります。加工といっても「切断」だけでシャーリング、ガス溶断、プレス抜き、レーザー切断などが、「曲げ」ではベンディング、ロールフォーミングなどの各種技術が駆使されています。その他にも溶接、切削などの加工があるのですが、各事業所で行っている加工範囲が異なっています。しかし、団地全体としてはそれらのことはすべてこのなかでまかなえるというわけです。
――在庫、加工、流通、つまり魚でいうと築地市場ですね。
加藤 業種は違いますが、そうですね。当団地で流通している扱い量は、出荷ベースで年間約500万トンあります。これは全国で流通している鉄材の8%近くになるのですが、東日本だけでいえばその割合はさらに大きくなります。
――出荷先は首都圏だけではないのですか。
加藤 青森県や宮城県からも注文が来ています。遠くから大型トラックを仕立ててきても、鉄鋼団地に来れば鉄材が揃わないことはない、といわれています。
――それでは「鉄の秋葉原」ですね。
東京五輪需要への期待と、その後の心配
――11年の東日本大震災の復興需要などで、建設業界の業績は絶好調です。鉄鋼業界も潤っているのでしょうね。
加藤 鉄鋼メーカーなどの川上はともかく、加工流通業界にはまだ十分に影響が及んでいないのが実情です。当団地の扱い量の推移で見ると、08年のリーマンショックで各社大きな影響を受けたところに、11年の東日本大震災で追い討ちを掛けられた。今はようやくそれが回復してきたのかな、という状況で、これから20年の東京五輪へ向けて需要の拡大に多少なりとも期待しています。
――業界の皆さんは、市況をどう見ているのでしょうか。
加藤 団地の加盟社に「景況実感調査」を毎月しているのですが、月商額が対前年同月と比べて伸びている会社数は短期的には減少しています。