一方、初めてもしくは6カ月以上たって来店したり、お薬手帳を持参しなかったりした患者の場合は、処方箋1回につき同50点(500円)となる。患者負担は3割で約150円だ。
つまり、利用する薬局を決めて毎回お薬手帳を持参すれば、40円程度安くなるというわけだ。これまでは、お薬手帳ありが41点(410円)、なしは34点(340円)で、持参しないほうが患者は得をする状況だった。
さすがに、この状況は手帳持参の推進に逆効果になっているとして改定されたが、薬局にとっては、手帳を持参されると1人につき120円売り上げが減少することになる。もし、窓口でお薬手帳の持参を促されなかったら、その薬局は、患者の健康よりも売り上げを重視しているのかもしれない。
日本医師会が薬局の「儲けすぎ」に警告
薬局をめぐっては、近年「儲けすぎ」という批判も根強く、日本医師会が大手薬局チェーン社長の給料を問題視するレポートを公表するなど、調剤薬局への報酬引き下げを求める意見が出ていた。例えば、日本調剤の三津原博社長の14年の報酬は6億7700万円に達している。
結果的には、調剤報酬全体では微増となったが、大病院の前に乱立する“門前薬局”への報酬が引き下げられた。お薬手帳持参者に対しての30円の値下げも、その流れにあるという見方もあり、日本医師会医理事は「今後も厳しく見直しを求めていく」と述べている。
ほかに、身近なところでは、大学病院などの大病院に紹介状なしで受診する際、初診時に5000円(歯科では3000円)の定額負担が義務付けられた。高度な医療を提供すべき大病院を軽症患者が受診することで、効率的な医療提供ができなくなっているというのが理由だ。
大病院受診時の負担を大きくすることで、患者を診療所や中小病院に誘導しようという施策だが、結果的に2つの医療機関を訪れることになると、時間的にも費用的にも、患者の負担はそれなりに大きくなる。5000円では期待通りの効果が上げられないとして、早くも次期改定でのさらなる負担増も予想されている。
13年度の日本の医療費は、約40兆円。高齢化の進展で当面は増加の一途をたどり、国家財政にとっても大きな負担だ。窓口で払う以上の金額が、保険料や税金で賄われている。一人ひとりが医療の適正利用を心がけるというのは、想像以上に重要なことだろう。
(文=編集部)