だが、ライバルも負けてはいない。国際自動車(kmグループ)もM&A戦略を採り、保有台数は4078台を誇る。大和自動車交通は中小事業者の共同無線グループである中央無線と提携し、車両デザインやちょうちんを大和に統一し、一気に保有台数を2645台に増やした。帝都自動車交通のハイヤー・タクシーの保有台数は現在920台で、再編の動きに乗り遅れた。
この10年間に東京のタクシー業界は寡占化がさらに進み、日本交通と国際自動車の2強時代になったのが大きな特徴だ。今後は、この2強を軸に再編が加速することになるだろう。
【東京都内の主なタクシー会社グループの保有台数】
・日本交通グループ:5689台
・国際自動車グループ:4078台
・大和自動車交通グループ:2645台
・帝都自動車交通グループ:920台
・東京無線協同組合(60社):4415台
・チェッカーキャブ(54社):4400台
(資料:各社のホームページに掲載されている15年末時点の車両台数、日本交通は16年3月末)
保有台数全国一に躍り出た第一交通産業
業界最大の保有台数を持つまでになった第一交通産業が東京地区のタクシー業界の再編の目になるとみられている。同社は福岡県北九州市で創業、現在も本社は北九州市小倉北区で、福岡証券取引所に上場している。タクシー会社としては最後発だが、70年代からM&Aを進め、全国各地のタクシー会社を買収して成長した。特に、東の東京急行電鉄(東急)系と西の南海電気鉄道系のタクシー会社を買収したことが大きかった。
現在は北海道から九州・沖縄まで全国に事業所を持ち、グループ全体の保有台数は15年12月末時点で業界首位の8082台に達している。その後さらに3社の買収で262台が上乗せされるなど、M&Aの意欲は衰えを知らない。20年度に1万台の大台を達成するという高い目標を掲げている。
グループ会社で、東京都内の第一交通、芙蓉第一交通、東京・神奈川・千葉に拠点を持つヒノデ第一交通は、無線の使用はチェッカーキャブに所属していたが15年に脱退。自社無線での独自営業に切り替えた。得意のM&A戦略で中小のタクシー会社を傘下に組み入れるための布石と見られている。
大日本帝国、さらに言えば日本交通&国際自動車の牙城を第一交通が突き崩すことができるかどうか。タクシー業界再編の最大の見どころである。
(文=編集部)