周知の通り、後継権をめぐって長男と次男が繰り広げていたロッテグループのお家騒動。勝者は次男の辛東彬(シン・ドンビン、日本名:重光昭夫)韓国ロッテグループ会長にほぼ確定しつつあるが、まだ法廷闘争の真っ最中だ。
このお家騒動で韓国国民から失望と反感を買ってしまったロッテのイメージは、現在のところ最悪といってもいいだろう。国民から非難はもちろん、メディアからも「見苦しい」と叩かれている状況だ。
そんななか、ロッテが今までにない新しい経営戦略を繰り広げている。そのひとつが、「ロッテ企業文化改善委員会」が発刊した接客マニュアル本だ。タイトルは「あなたの心、傷つかないように」。接客業に就く自社従業員が実際に経験した、客からのパワハラ・セクハラの実例とその対処法を集めたものだという。
掲載された実例を、いくつか見てみよう。
「領収書をお渡しする時、いきなり『お姉ちゃんかわいいなあ。俺にチューしてくれよ』と言われる」
「コーヒーにクリームを入れてくれと後から言ってきた客に、クリームがないことを伝えると、ホットコーヒーをカップごと投げられる」
「セールのご案内をしていると、おじさんが『じゃあ、お嬢ちゃんもセールしてるのか?』とニヤニヤしながら言ってくる」
マニュアル本によると、今後そういった客のパワハラやセクハラに対して、従業員がひたすら我慢する必要はなさそうだ。深刻な事態の場合は警察に通報することを奨励しており、電話でのパワハラ・セクハラの場合には、たとえ相手が顧客だろうと先に受話器を置いて通話を切ってしまっても構わないとしている。すべての責任は会社が取るそうで、とにかく断固として対処することを勧めている。現場でどれだけ通用するかは疑問だが、まずはこのマニュアル本で社内の雰囲気を切り替えようとしたようだ。
2つ目は「ロッテを潰せるアイデアを探せ」というプロジェクトだ。これは、辛東彬会長直々の指示によるものだという。ライバル社が考えそうな“ロッテ潰し”の素晴らしいアイデアを社内で募集するプロジェクトである。過去のロッテにはなかった自虐的発想ゆえ、これが今後の経営にどうつながるか、関心が寄せられている。
そして3つ目は、採用条件の変化だ。今までは資格や学歴に能力など、いわば“スペック”を重視してきたのだが、今年からは100%職務能力だけを見て採用を決めるという。「ロッテの新しい企業文化をつくろうという意志を込めて」このような変化を模索したというが、若者向けのイメージ改善戦略という感が拭えない。
イメージアップのため、何かと策をめぐらしているロッテ。メディアはネガティブな意見を示している。ロッテの従業員からしてみれば、「社内改革やイメージ改革よりも前に、とりあえず親子ゲンカと兄弟ゲンカを早く解決してほしい」というのが本音だと思うが、はたしてどうなるか。
(文=編集部)