そこで初めて、「ロカボーノを欲しがるのは、ハレの気分を味わいたくてレストランに来ているお客様ではなく、なんらかの理由で糖質制限を意識している人なのだ」と気づいたそうです。それまでパスタができれば条件反射のようにイタリアンレストランに売り込んでいましたが、その方法が間違いだったことに気づいたのです。
それをヒントに、売り込み先を従来のイタリアンレストランではなく糖尿病を気にされている方にして、医療施設、老健施設、介護施設、あるいはそうした施設に食品を卸している会社、健康に意識が高い方、食生活から改善するフィットネスサービスを行っている会社にアピールしたところ、反応や評価がそれまでとはまったく異なったそうです。そうしたお客の評価軸は味わいだけではなく、あくまでも機能性とのバランスにあるからです。
プリマ・パスタは、次は糖質制限をする妊娠中の女性に売り込むための施策を打っています。今までずっとイタリアンなど洋食系のレストランや高級ホテル、それらと取引する卸業者ばかり相手にしてきたため、まったく異なる見込み顧客層へのリーチには相応の苦労があります。「もし新規開拓営業に慣れたメンバーがいたら助かるのに」と思うことが多いようです。
外に目を向ければ、活躍の場は溢れている
BtoBにせよBtoCにせよ、良いものをつくれば勝手に人が集まってきて買ってくれる、ということはほとんどありません。「誰にどんな利得を感じてほしいか」「その人にメッセージを届けるためにはどうすればいいのか」「どうやって表現すれば伝わるか」というマーケティングのアクションを合わせて起こさなければ意味がありません。
「そんなの当たり前だよ」と思われるかもしれませんが、つくるのが得意な人は、どうしてもつくること以外を考えるのは後手に回ります。逆に売るのが得意な人は、つくるのが苦手な傾向があります。プリマ・パスタの事例から、改めて会社組織はチームで動くものだと実感しました。そして、まだこうした特徴のある中小企業でもメンバーが欠けているチームがたくさんあり、人材が活躍できる余地がたくさんあるという実態の一例だと思えました。