トヨタとソフトバンク、どちらの投資リスクが大きいのか? 資本コストとは
このようにリスクへの感度は人によって異なるため、要求するリターンも異なるのです。にもかかわらず、モデルを活用して株主資本コストの算出を標準化しようとすることに無理があるのです。
しかし、無理だと言ってあきらめてしまうと不都合なことが多くなります。株主資本コストがなければ、ROEと比較することにより企業価値が創造されているのかが判断できませんし、また企業価値評価に利用する割引率をどうすればよいのか、ということになります。そこで、この不都合を解決すべく考え出されたのがCAPMというモデルなのです。
CAPMとはどのようなモデルなのか
以下の公式が示すように、CAPMには3つのパラメーターがあります。
・株主資本コスト = β×(マーケットリスクプレミアム)+リスクフリーレート
詳細に説明する前に簡単に紹介すると、トヨタやソフトバンクなどの個別銘柄がTOPIXや日経平均などの市場インデックスと比較した場合にどの程度リスクが高(低)いか、ということで株主資本コストは決定されます。もちろん、このようなアプローチでは個人のリスク感度は無視されますが(個人のリスク感度と市場インデックスに関連があるとは思えません)、株主資本コストの算出プロセスを標準化することが可能となります。
では、CAPMのそれぞれのパラメーターを見ていきましょう。
(1)β
個別銘柄の株価リターンの変動とTOPIXや日経平均などの市場インデックスの変動の連動性を示す指標であり、市場感応度とも呼ばれます。個別銘柄の株価リターンと市場インデックスのリターンを回帰分析して算出します。算出に利用する株価データは、5年間の月次リターンが選択されることが一般的ですが、もちろんこれも厳密なルールではなく、たとえば2年間の週次リターンを利用するケースもあります。
具体的な算出方法としては、エクセル上でX軸に市場リターン、Y軸に個別銘柄の株価リターンを並べて散布図を作成し、近似曲線を描きます。その近似曲線の傾きがβとなります(SLOPEというエクセルの関数を利用すれば散布図は不要になります)。βが1以上(以下)であれば、市場インデックスよりも高(低)リスクということになります。当然ですが、βが高いほど株主資本コストは高くなります。「Yahoo!ファイナンス」を活用すれば、株価データが取得できますので、興味のある企業のβを計算してみてください。