値上げの影響は客数の減少だけでなく、売上総利益(粗利益)の低下と販管費の上昇を引き起こした。売り上げ不振により値引き販売を強いられ、売上総利益を圧迫した。9~2月期の国内ユニクロ事業の売上総利益率は46.0%と前年同期比3.5ポイント減となった。販管費の上昇は、値下げ販売に伴う売価変更作業で人件費が上昇したことが影響した。値上げ以外では、物流関連のコストアップや地域正社員の増加による人件費の上昇、eコマース事業の拡大による広告宣伝費の増加なども影響した。売上販管費率は32.0%と2.0ポイント増となった。国内ユニクロ事業の採算性の悪化により、ファストリの9~2月期の売上総利益率は低下傾向にあり、売上販管費率は上昇傾向にある。
商品力の欠如
値上げの問題に加えて、今のユニクロには商品力の欠如という問題がある。値上げをしても、値上げ分以上の付加価値があれば消費者は納得しただろう。
ジーユー事業は大幅な増収増益となった。価格以上の価値ある商品を提供できていることがその理由といわれている。競合のファッションセンターしまむらは「裏地あったかパンツ」の大ヒットなどがあり、16年2月期決算で増収増益を達成した。
ユニクロは消費者に価値ある商品を提案できるのか。決算説明会では「ファッション性、ニュース性をさらに高める」と表明したが、なんとも抽象的な表現だ。ニューヨーク、東京、上海、パリ、ロンドン、ロサンゼルスに設定したR&Dセンター(研究開発拠点)において、商品開発力を強化するとしている。今のユニクロには、消費者が欲しいと思える商品の開発が必要不可欠だ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。