17年4月のガス小売り全面自由化では、東電が逆襲に転じ、攻守所を変えることになる。東電が東ガスの牙城に攻め込む番となり、電力とガスのセット割を武器とするのは想像に難くない。東ガスは、東電の参入で「2~3割の顧客を奪われるだろう」(広瀬社長)と、強く警戒している。
東電がガス市場に参入する前の1年間に、東ガスが電力とガスのセット割でどれだけ顧客をキープできるかの体力勝負となる。電力自由化をめぐるバトルは、電力+ガスの完全自由化をにらんだ前哨戦にすぎない。
東ガスと関電が提携
東電は、管内2700万世帯の2割にあたる500万世帯は新電力などの新規参入組に流れると試算している。そこでガス事業への進出と、営業地域以外で電力を販売することで巻き返しを図る。
ガスが自由化になると、東ガスは一転して守勢に立たされる。管内の1100万世帯のうちの2~3割、つまり200万世帯から300万世帯は、電力とガスのセット割に乗り出す東電に奪われるという厳しい予測を立てている。
東ガスが東電から奪うのは100万世帯、奪われるのは2~300万世帯。単純比較すると、東ガスの分が悪い。東電から奪取する世帯の目標を上積みし、一方で東電に流れるガス需要家の数をいかに少なくするかにかかっている。攻めと守りの両面作戦を徹底しなければ勝ち目はない。
決め手となるのは営業力だ。東ガスの営業部隊の主力は、関東に200以上あるグループのガス器具販売店である。東ガス陣営で最も顧客を獲得したのはガス器具販売店だったが、これは営業力の賜だ。
東電の営業部隊は、実はソフトバンクである。ソフトバンクは東京電力エナジーパートナーと組んで、東電管内だけでなく中部電力や関西電力の管内でも電力を販売してきた。スマートフォン(スマホ)や固定電話と電力をセットで契約すると、通信料を月に300円割り引いている。3~4人世帯で月の支出が5%ほど減るという。
東電に攻め込まれた中部電力はNTTドコモ、関西電力はKDDI(au)と提携。通信と電力のセット販売を展開している。17年4月のガス小売り自由化後は、電力、ガス、通信の3点セットがセールスポイントとなる。
東ガスと関電は4月、液化天然ガス(LNG)の相互融通とLNG火力発電所の運転・保守について業務提携した。これは関電の首都圏進出の布石である。電力とガスの小売りの全面自由化を見据えて東ガスと連携を深める。
エネルギー業界の首脳は関電と東ガスが資本提携してグループを組み、東電に対抗する狙いがあると指摘する。東電vs.東ガス+関電となれば、勢力が均衡する。
電力・ガスの大再編時代の幕がいよいよ上がった。
(文=編集部)