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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

歯磨き&用具選びは間違いだらけで無意味だった!深刻な歯抜けで食の楽しみ失う

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

 ブランド全体の売上高は2年連続2ケタ増と絶好調だ。国内トイレタリー商品では年間売上100億円が「メガブランド」の目安だが、この数字を大きく超えている。

 少し引いた視点で考えると、予防歯科というコンセプトは興味深い。虫歯や歯周病という症状を予防するのではなく、生活習慣そのものに訴えているからだ。

 実はトイレタリー分野は、高機能の商品ができると、その道のプロを敵に回すことになりかねない。たとえば、自宅でセーターを洗える洗剤の場合、それを使うことでセーターをクリーニング店に出さなくて済むようになる。その意味で、クリニカは歯科医院とどう向き合っているのだろうか。

「日本歯科医師会とも連携して『自分の歯を大切に考え、定期的に歯科検診に通いましょう』という活動を進めています。クリニカのテレビCMでも、14年から『歯医者さんにほめられる歯をめざしましょう』というメッセージで訴求しています」(同)

 こうした信頼できる専門家との連携で、商品に「お墨付き」の付加価値をつけるのも、同業界の得意な手法だ。長年にわたる歯科医師や歯科衛生士との交流で培った知見が、商品開発や啓発活動の中身にも反映されている。

 もうひとつの特徴は学校との連携だ。「若い時からの取り組みへの訴求」例として、6月3日に「全国小学生歯みがき大会」を主催している。日本学校歯科医会、東京都学校保健会などとの共同開催だ。前身の大会が始まったのは1932年で、今ではインターネットで国内やアジアの小学生が約9万人も参加する。メーカーにとっては未来の消費者に向けた交流といえる。

25年で5億本増えた虫歯

 実は、厚生労働省「歯科疾患実態調査」によると日本人の総虫歯本数は25年で約5億本増えている。この理由はいくつか挙げられるが、医療技術や健康意識が進み、昔のように虫歯をすぐ抜かなくなったことも大きい。歯の残存本数は健康寿命にも影響するからだ。

 クリニカはブランドの公式サイトで「ヒミコノハガイーゼ(卑弥呼の歯がいーぜ)」という言葉で、よく噛むことの重要性を伝えている。「ヒ」は肥満防止、「ミ」は味覚の発達など、それぞれの効果の頭文字をとった言葉だ。「ハ」は歯の病気予防を意味する。噛むことで唾液がたくさん出てくるようになるが、唾液には食べカスや細菌を洗い流す作用もあり、虫歯予防や歯肉炎予防にもつながるという。

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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