「セブン&アイ鈴木前会長は流通の神様」のデタラメ…ヨーカ堂と百貨店は完全に失敗
しかし、ヨーカ堂の社長に就任して以降は、それまで伸びていたヨーカ堂の売上高はバブル崩壊の影響もあって頭打ちになり、営業利益も長期的に減少傾向をたどっています。そして、16年2月期決算ではついに139億8000万円の営業赤字に転落してしまいます。
GMSはいずれの企業も四苦八苦の状態とはいえ、「流通の神様」だったのならば、なんらかの手を打っていたはずです。
これまでのセブン&アイHDの経営で感じるのは、セブンの成功と勝利の方程式、あるいはパラダイムが、コンビニ以外の業態では逆に弱みとなり、経営の足を引っ張ってきたのではないかということです。
ではセブン−イレブンの成功と勝利の方程式の何が、他の業態では通じなかった、あるいは足を引っ張ったのでしょうか。
チームマーチャンダイジングの罠
セブン−イレブンでいえば、弁当やおにぎりなどのオリジナルデイリー商品やプライベートブランド(PB)のセブンプレミアムが品揃えの強みとなっています。昨今ではセブンカフェの成功がよく取り上げられますが、これらの商品力を生み出しているのがチームマーチャンダイジング(MD)だといわれています。メーカーやサプライヤーからの提案やコンペを通して、チームとして協業し、売れる商品に仕上げていく商品開発のスタイルです。セブン−イレブンではこれがうまく機能し、他のコンビニとの競争優位をつくり出してきました(2015年7月6日付「ニュースイッチ」記事『「セブンカフェ」はなぜ美味しく早いのか? チームMDの秘密に迫る』参照)。
しかし、チームMDには罠が潜んでいます。セブン−イレブンとヨーカ堂では単品当たりの販売数量がまったく違います。セブン−イレブンならメーカーやサプライヤーにとって、つまり売り手にとっても採用されれば大きな売上数量が見込めるので、セブン−イレブンのオリジナル仕様を開発し提供するメリットは計り知れません。
ところがヨーカ堂となると話は違ってきます。GMSは扱い品目が多いだけにコンビニ以上に競争が厳しいのです。同じGMSだけでなく、食品スーパー、紳士服やカジュアルウェアなどの衣料品チェーン、靴、医薬品、酒の小売店などのライバルがひしめいています。
たとえば、同じGMS事業でいえば、営業収益ではイオンが2.8兆円で、ヨーカ堂は1.3兆円と倍以上の差をつけられています。取引額が異なれば、当然取引条件にも差がついてきます。