LINEは国内では抜群の知名度を誇るが、非上場のためこれまで財務データを公表してこなかった。LINEが6月10日に東証に提出した「新規上場申請のための有価証券報告書」で、初めて財務内容や株主構成の実態が明らかになった。
15年12月期連結決算(国際会計基準)は赤字だった。売上高にあたる売上収益は39.7%増の1206億円。13年12月期は395億円、14年同期863億円と、右肩上がりの急成長を遂げた。
半面、15年12月期の当期純損失は79億円の赤字だった。15年3月期に買収した音楽ストリーミング事業に失敗し、撤退などに伴う損失118億円を計上したことが響いた。14年12月期は20億円の黒字だったが、13年同期は63億円の赤字。LINE単体の15年12月期の最終損益は167億円の赤字だった。
上場後は、四半期ごとに業績が評価される。収益を改善して黒字化することが経営の喫緊の課題となっている。
ストックオプション付与で億万長者が続出か
LINEの役員11人のうち親会社である韓国ネイバー出身は4人。執行役員は17人のうち7人が韓国系だ。
株主構成は韓国系一色。直前にストックオプション(自社株購入権)を与えたため株主総数は1568人。筆頭株主は韓国ネイバーで持ち株比率は87.27%。個人の筆頭株主はシン・ジュンホ取締役CGOで保有株式数は1026万株だ。1株2800円で計算すると、保有株式の価値は287億円に上り、出澤剛社長の2.7億円を大きく上回る。
LINE単体の従業員1122名(平均年齢34.2歳)の平均年間給与は795万円。平均勤続年数は3年未満だ。グループ全体の従業員は3153名。LINEの上場で、ストックオプションで株式を手にした社員の中から、時ならぬ億万長者が続出することになるかもしれない。
アイテムの「通貨」該当を逃れるために隠蔽工作
LINEは14年に上場のための審査が行われ、承認直前にLINE側が延期を決めた。親会社の韓国のネイバーは、LINEの支配権を維持するために普通株の10倍程度の議決権を持つ種類株を発行した上での上場を目指したが、「株主の公平性、平等」を強く要求する東証と意見の食い違いがあったといわれている。
だが、上場まで2年かかった本当の理由は、財務局との攻防にあった。LINE上場のネックとなっていたのが、スマートフォン用に提供しているゲーム内で使うアイテム(道具)が資金決済法で規制されるゲーム上の「通貨」にあたるかどうかという点が大きな争いとなった。