株式市場には「噂で買って、ニュースで売れ」という相場格言がある。株価は思惑で動いているときが華で、事実が出たら材料が出尽くしになるという戒めだ。単なる噂なら自己責任の原則で売買すればよいが、最近では会社のIR(投資家向け広報)に投資家が振り回されるケースが目立ってきている。
バイオ関連企業のリリースなどで散見されるが、直近ではゲーム関連企業をめぐって乱高下した、極端な事例があった。
電子雑誌を手がけるブランジスタグループ(東証マザーズ)では、ゲーム会社を設立すると昨年発表し、その内容をめぐって株価が急騰、その後に急落する展開となった。会社側は売上が急増することを示唆するリリースを出しており、その責任も問われかねない状況にある。
ゲーム子会社であるブランジスタゲームの設立は2015年10月。会社側では11月に国内ゲーム市場7500億円、さらに3兆円へと拡大を続けるオタク市場をターゲットに、巨大マーケットに参入すると発表。アイドルグループAKB48をはじめ、数々のヒットを手がけた作詞家の秋元康氏を総合プロデューサーに迎えることを明らかにした。
その際、発表資料では従来のオンラインゲームとは違った新しい企画で消費者に楽しんでもらうだけでなく、企業とタイアップして販売促進支援の広告型ゲームなどBtoBtoCのビジネスモデルを開始するとしていた。
秋元氏プロデュースという話題から、市場の期待も高まり、15年10月まで500円前後だった株価は翌11月には2000円台と大幅高となっている。
株価高騰で30倍以上
今年4月には、5月27日にブランジスタゲーム「神の手」に関するサービス内容の全容を公表すると発表。株価は期待感からさらに4000円台まで上昇。思惑人気が加速し、5月16日にはなんと1万5850円の高値を付けた。昨年秋から30倍以上になったことになる。
また、親会社でLEDレンタルなどを展開するネクシィーズグループの株価も急騰。ブランジスタの株価上昇で、株式の含み益が増加するというのが買いの理由になった。
そして注目の5月27日には、「神の手」がゲームセンターで人気のクレーンゲームを完全バーチャルで再現し、獲得した景品が自宅に届くスマートフォン(スマホ)用神体験3Dクレーンゲームだと明らかにした。事前登録を開始するとともに、ゲームの開始はAKBが選抜総選挙を実施する6月18日だと発表した。