6月25日付当サイト記事『ツタヤ図書館、料理・美容・旅行の古本を大量購入…価値1円の本を千円で購入』において、宮城県多賀城市立図書館が蔵書として購入した図書が、異常なまでに古い本を高値で大量購入していた事実を報じた。
レンタル大手TSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が運営する同図書館は、佐賀県武雄市立図書館、神奈川県海老名市立中央図書館に続く全国3番目の「ツタヤ図書館」として注目を集めている。
そのツタヤ図書館に関しては、調べれば調べるほどに疑惑が浮上しているが、多賀城市立図書館の追加蔵書購入に関連して、もうひとつ興味深い資料をお見せしよう。
ここには、刊行年度の古い本がズラリと並んでいる。これも中古本の選書リストの一部と思われるかもしれない。だが実は、これは多賀城市立図書館がツタヤ図書館としてリニューアルオープンする前、昨年4月に決裁された除籍(廃棄)本リストの一部分である。
この除籍リストをみると、ほとんどは雑誌のバックナンバーで、単行本の除籍は少ないが、その単行本には生活・実用書がズラリと並んでいる。
注目したいのは、いつ発行の本かだ。この除籍本の「受入日」(実質的には刊行年)をみると、1990年代もあるが大半は2000年代だ。前回記事で紹介した選書リストの料理本に数多くの90年代出版のタイトルが並んでいたのと比べたら、むしろ廃棄した本のほうが新しいくらいである。
市民の貴重な税金で購入する本が、廃棄した本より古いというのはどういうことなのか。これから購入しようとしている本のリストと、不要として廃棄した本のリストの見分けがつかないとは笑い話にもならない。大量の古本を買うということは、こういう逆転現象が起きることも容易に想定できたはずだ。だが、あえてツタヤ図書館は1万3000冊という大量の古本を購入した。
もちろん、除籍本のなかには、破損したり汚れたために廃棄する「破損・汚損図書」も含まれるため、傷んだから廃棄した可能性もある。しかし、ある現役の図書館司書は「その可能性はほとんどない」と断言する。
「税金で購入された図書館の蔵書は、簡単には廃棄しません。汚れたり破れたりしても必ず補修して使います。汚損本として廃棄するのは、除籍されたなかのほんの数パーセントにすぎません」
除籍処理を担当した市の職員も、まさか廃棄した本よりも古い蔵書が、後から大量に入ってくるとは夢にも思わなかったに違いない。