ゴミ同然の本を高値で“買わされた”多賀城市
たとえとして持ち出すにはあまり適切ではないかもしれないが、ツタヤ図書館の選書問題は、「廃棄カツ」問題と似ている面がある。
今年1月、大手カレーチェーン「CoCo壱番屋」(ココイチ)が、冷凍ビーフカツにプラスチック片が混入した疑いのあるとして産業廃棄物業者に廃棄を依頼したところ、それが転売されて小売店の店頭で販売されていたことが発覚した。
その事件報道の過程で、ほかにも同様に廃棄処理されるべき食品が市場に還流されていることが明らかになった。流通大手で賞味期限が切れかかった食品を大量廃棄されたものも、廃棄物処理業者から横流しされて市場で販売されるケースが少なからずある。
賞味期限切れ食品に市場価値はなく、食品販売業者は「ゴミ」として費用をかけて廃棄物処理業者に処理を依頼する。しかし、賞味期限が切れても、すぐに食品の味や安全性に問題が生じるわけではない。そこで、激安商品を欲する小売店側の思惑と重なって、廃棄物が闇で転売される不適切な行為が後を絶たないのだ。
ココイチの廃棄カツは、横流しした業者が通常商品の3割という激安価格で販売しており、それに弁当店などが飛びついたと報じられている。産廃業者はお金を受け取って処理を依頼されたうえに転売していたわけで、2重に利益を得ていた。
書籍の場合、食品のように消費期限や賞味期限が定められているわけではないが、多賀城市立図書館が大量に購入した生活・実用書については、小説や評論などと比べて年月の経過とともに市場価値が下がるのが速く、いわば賞味期限は短い。刊行から5年以上たった本を、われわれが古本屋に持ち込んでも、買い取り価格はタダ同然だ。つまりゴミ扱いされる。
そんな実用書の古本を公共図書館が大量に購入して納本業者を大儲けさせる行為は、「適正な取引」とは言い難いのではないだろうか。
多賀城市立図書館の選書について本連載では、ツタヤ図書館の問題の本質は、「不適切な選書」にあるのではなく「不透明な公金の支出にある」と、再三指摘してきた。市場価値がいくらなのかを精査しないまま、CCCの言い値で追加蔵書を中古で大量に購入させられている実態が明るみに出たのは、佐賀県武雄市、神奈川県海老名市に続いてこれで3度めである。
多賀城市立図書館のリニューアルオープン前の内覧会において、CCC図書館カンパニー長・高橋聡氏は、「開館時から完璧に近い形を示せたと考えている」と、自信満々の発言をしている。
同氏は、「武雄の時はド素人でした」と言っていたが、CCC運営図書館2館めの海老名市立中央図書館では選書リストの半分は料理本、3館めの多賀城市立図書館では、さらに古本を増強した選書リストを提出している。これをもって「完璧に近い形」と胸を張っているということは、利用する市民にとってではなく、CCCにとって“完璧”なのかもしれない。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)