日本の貧困率は、相変わらず高いです。先進国と呼ばれている30カ国の中で、4番目という位置におります。日本より上位にいるのは、メキシコ、米国、トルコの3カ国で、逆に貧困率が低い国は、チェコ、デンマーク、スウェーデン、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、フィンランドで、北欧諸国が多いことがわかると思います。これは、いわゆる所得再分配がうまくいっているということで、日本とは対照的です。
特に注目しなければならないのは、「子供の貧困率」だと思います。子供たちの6人に1人が貧困の中で暮らしているといわれています。さらに問題なのは、対応できている数だけで年間約9万件にも及ぶといわれている、育児放棄や児童虐待です。次代を背負って立つ子供たちに対して、あまりにもひどい扱いをしていることを大人は自覚しなければいけません。
子供たちに対するひどい扱いは、保育士に対する待遇にも表れています。6月11日には、JR高松駅前などで保育士の待遇改善を訴える集会が開かれました。そこでは「政府の緊急対策は、安心安全な保育とは正反対のものだ」「このままでは保育士の身体がもたない。賃金が安い。しんどい」という訴えがなされたといいます。
劣悪な給食事情
保育園、幼稚園、小・中学校などでの給食についても、お母様たちから直接報告を聞く機会がよくありますが、いずれも、その劣悪さに頭を悩ませていることがわかります。昔のように、給食を残さず食べないと立たされるとか、食べ終わるまで家に帰さないといったことはなくなってきているようですが、給食の内容が向上した、充実したというような話を聞くことはありません。
管理栄養士で、健康・料理評論家としても著名な幕内秀夫氏の著書『変な給食』(ブックマン社)の帯には、「学校給食が子どもを病気にする!」と書かれており、裏には「先生! 私たち、ふつうのご飯が食べたいです!」という一文が載っています。2009年に出版された本ですが、給食の内容は今もこの頃とほとんど変わりはないでしょう。もしかしたら、その頃よりレベルダウンしているかもしれません。同書に掲載されている写真を見ると、絶望的な気分になります。おなかがすいていたとしても、とても食べたいとは思えないような現実の給食の写真です。
保育園や幼稚園で出されるおやつに関しても、「なぜ、これを子供に食べさせるのか」と言いたくなるようなものが出されているようです。ポテトチップスを含むスナック菓子などが日常的に出され、着色料をたっぷり使ったゼリーや人工甘味料の入った清涼飲料水も出されています。
これは主に経費を削減するための選択なのでしょうが、経費を抑えるという意味では保育士だけではなく、保育園や幼稚園で働く調理師の待遇も決して良いとはいえません。彼ら、彼女らは、本来は「子供たちのために良い食事をつくりたい」と考えているのでしょうが、使える経費を考えると現実的な選択はまったく違うものになってしまうのだと思われます。しかも、調理師自身の収入も不当に低いなかで、良い人材を確保し続けるのが無理なことは明白です。つまり、このことは私たち大人が子供たちの食事はどうでもいいと考えているということの証左でもあるのです。
安心な給食のためには、ある程度の費用が不可欠
もちろん、そんな保育園や幼稚園ばかりではなく、筆者の知人が岐阜県内で運営している園では、毎日、新鮮な食材を使って子供たちが喜んで食べてくれる内容の給食を出しており、ご父兄の方々からも高い評価を受けています。実は筆者もこの園には協力していて、毎年新たなオリジナルメニューを何品も提供し、それが岐阜県内のほかの園でも採用されています。
この園のように、ある程度のレベルの給食を出すためには、それ相応の費用がかかることも事実ですが、子供たちの(脳を含めた)体の正常な発育のためには、それはかけるべき費用だということを訴えたいのです。
大人は、たとえジャンクフードの食生活でも、それは自身の選択で食べているのです。しかし、子供たちは自分が食べるものを選択することができません。大人が代わって選択してあげなければならないのです。その大人の選択が間違っていたら、子供たちは食べるべきでないものを食べさせられてしまうことになります。
大人は、正しい選択眼を持たなければいけません。そのためには、当の大人が真っ当な食事をしていなければならないでしょう。カップラーメンやレトルトカレー、ハンバーガー、牛丼といった手軽なものばかり食べていては、正しい選択眼が磨かれるわけがありません。自分たちが食べるものを、もっと真剣に考えるべき時が来ていると思います。
(文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事)