ソニービルは華やかなイメージを発信してソニーの高度成長を支えてきた。しかし、2000年代以降、ソニーは消費者を熱狂させるような商品を生み出せなくなり、ブランドは輝きを失った。業績悪化でリストラを重ねた際には、必ずこのビルの売却の噂が出たほどだ。
創業地の品川・御殿山の旧本社ビルは売却したが、それでも銀座からは撤退しなかった。
再開発が急ピッチで進む銀座
国土交通省が発表した16年1月1日時点の公示地価で、銀座4丁目の商業地、山野楽器銀座本店が1平方メートルあたり4100万円と過去最高を記録した。2位は銀座5丁目のソニービルの3470万円。3位は丸の内2丁目の丸の内ビルディングの3280万円だった。
ソニービルの敷地面積は707平方メートルだから、土地の価格は単純計算で245億円になる。解体した後、空き地にして一般に開放するというから、ソニーはなかなか太っ腹だ。
公示地価ランキングでソニービルが丸ビルを逆転した。丸ビルがずっと2位を続けてきたが、今回、ソニービルの地価は前年より18.0%アップし、丸ビルの7.2%増を上回ったためだ。
国交省は銀座の地価が上昇した原因について、訪日客の来訪、売上増に伴う店舗賃料の上昇、世界ブランドの旗艦店の出店を挙げた。既存の建物の建て替えに加え、大規模な再開発も進んでいると分析している。
銀座プレイスは9月24日にオープンする。サッポロホールディングスグループが中心となって進めてきた再開発事業だ。完成後は旧サッポロ銀座ビルに入居していたサッポロライオン、つづれ屋銀座店、日産が再び入居する。ここへソニーのショールームとソニーストア銀座が移転するわけだ。
3月には数寄屋橋交差点を挟んだソニービルの向かい側に、東急不動産が1800億円を投じた商業施設、東急プラザ銀座が開業した。ヒューリックは、数寄屋橋交差点に近いニュートーキョービルヂングなどの跡地に地上14階建ての商業ビルを建設している。松坂屋銀座店跡地に建つ銀座エリア地区最大級の商業施設は、17年4月に開業する予定だ。
20年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、訪日客の増加を当て込み、銀座では再開発が急ピッチで進む。
ソニーはソニービルの跡地で屋外のライブやイベントを行い、情報発信拠点として活用する。平井一夫社長兼最高経営責任者(CEO)は、「銀座の真ん中に公園をつくるというソニーらしい大胆さを世界に発信したい」と語っている。銀座ソニーパークは、輝きを取り戻しつつあるソニーの、そして銀座の新しいシンボルになれるのだろうか。
(文=編集部)