知事=公職への「誠実さ」欠落する鳥越氏を落選させた東京都民に、私は敬意を示したい
7月31日に投開票が行われた東京都知事選は、増田寛也氏、小池百合子氏、鳥越俊太郎氏の3有力候補で争われ、告示2日前に出馬表明をした鳥越氏は一敗地にまみれた。
今回のように現職が出馬せず新人同士が争った都知事選は、過去4回続いていずれも最後に出馬表明をした主要候補者が当選してきた。そんなこともあり、早々と出馬意向を示していた小池氏は鳥越氏に対して「究極の後出しじゃんけん出馬になると思います」と対抗心とも不快感とも取れる発言を、鳥越氏の出馬日にしていた。
「後出し出馬のジンクス」に加えて、鳥越氏にはジャーナリストとしての知名度の高さもあり、候補者の選定に苦慮していた野党各党からも歓迎され、急遽統一候補として野党4党の支援も得られることになった。選挙戦が始まった段階では、鳥越氏有利と見る向きも少なくなかったのである。
目を覆う準備不足と不見識
過去の都知事選における“後出しじゃんけん立候補”では、とにかく告示1週間前までには主要候補が出そろっていて、政策や公約の準備・表明までなんとかこぎつけていた。
しかし、7月12日の出馬会見で具体的な政策や公約について問われると鳥越氏は、「昨日の夕方に出馬を決めたばかり」として発表せずに、私たちを唖然とさせた。「公約もいずれ公表する」などと、これでは3有力候補以外の候補者たちのほうがよほど覚悟や信念を持っていると私は印象を持った。
さらに少子化問題を問われて東京都の合計特殊出生率を「若干、他の地域よりは出生率は高いといわれていますけど、1.4程度です」と誤り、その後メモを渡されて、「東京都の出生率は1.17で、全国最低」と訂正した。準備もなければ勉強も間に合わなかった。
告示後の選挙活動期間に入っても鳥越氏は、増田氏、小池氏に比し活発な選挙活動を行っていない。午前中は陣営内の打ち合わせに当てられていたのか、街頭演説は午後に集中する傾向があった。7月16~18日の3連休は、各候補が都民に直接訴える絶好の機会だった。この3日間で最もたくさん街頭演説を行ったのは増田氏で22回、小池氏も21回を数えた。
鳥越氏はわずか7回で、他有力2候補の3分の1という体たらくだった。しかも、巣鴨地蔵通り商店街では、酷暑のなかで聴衆を20分ほど待たせて遅れてきた挙句、ろくに話もしなかったのである。すぐに歌手の森進一に応援演説を託してしまい、みずからの演説というか話というのは1分間もなく、候補者本人に対して聴衆から怒号が飛ぶという成り行きとなってしまった。