退職者続出で経営危機から、突然に超優良な世界的企業に変身した「信じられない」きっかけ
リーマンショック後のピンチを乗り超え、高橋氏は自分が描いた新しいスタイルを次々に実践していく。挨拶の徹底や、業務改善などの効率化や経営の透明化を追求していき、会社はまったく新しく生まれ変わった。そして6年連続増収増益という快進撃が始まる。
「今では、1年前と同じ仕事をしている社員はいません。後輩や部下に自分の仕事を教えたら、次の新しい仕事に取り組むという企業文化になったからです。昔は、ずっと同じ仕事をするのが当たり前という文化でしたが、今はまったく違います。常に新しい仕事に挑戦できるということで、社員のモチベーションも高く維持できています」(同)
高橋氏は、新しい仕事を生み出すことが社長の仕事と考え、自ら新しい業界の開拓にも力を入れる。15年3月に航空機部品の生産に必要な国際認証を取得し、航空機産業という新たな分野を開拓。現在は世界の大手航空機メーカーの部品製造を行っている。
また、年々競争が激しくなっている自動車エンジンのための試作部品製造も請け負い、最先端技術を磨き続けている。安全性に対する品質の高さが評価され、N700系新幹線のブレーキ部品も製造している。さらに、最新工作機械の導入にも積極的だ。1台数千万円もする高性能工作機械を思い切って何台も導入し、グローバルに競争できる環境をつくり続けている。
高橋氏に、「社員にどのようになってもらいたいか」という質問をぶつけてみた。すると、間髪入れずこのような回答があった。
「仕事を好きになってもらうことです。仕事ほど楽しいものはありません。仕事によってお客様が喜び、同僚が喜び、家族が喜び、地域社会が喜ぶ。自分の仕事によって多くの人に喜んでもらえるなんて、趣味では味わえない醍醐味です。その醍醐味を知れば知るほど、仕事は楽しいということがわかってきます。自分のために働くと、仕事はつまらなくなります。そしてつらくなります。しかし、人のために働くと、必ず喜びが生まれるのです。社員全員にそうなってもらうため、私ができることを精一杯行い、社員のために仕事をしたいと考えています」(同)
仕事を好きになり、楽しく、誰かのために働く――。これこそが、カルモ鋳工の成功の秘密なのだ。
(文=鈴木領一/ビジネス・コーチ、ビジネス・プロデューサー)