JDIは一度、シャッフルすべき
JDIに良い話は皆無だ。日立製作所がJDIの保有株を売却していたことが、定時株主総会後の6月22日に公表された有価証券報告書で明らかになった。JDIは12年に東芝、ソニー、日立の液晶部門が事業統合してできた会社だ。日立は14年3月期に1070万株を保有していたが15年同期に547万株に減らし、15年5月までに全株を市場で売却した。JDIの16年3月期の有価証券報告書によると、東芝とソニーは各1070万株を保有している。
JDIの株価は6月28日に154円の上場来安値をつけた。14年4月の高値(836円)の5分の1以下の株価だ。14年3月の公開価格は900円。初値は769円で公開価格を15%下回る低空飛行ぶりだった。上場してから一度も公開価格を上回ったことがない稀有な銘柄である。
スマホの中小型パネルで有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)の採用が進むが、先行する韓国サムスン電子などの競争でJDIは決定的に立ち遅れている。16年3月期にJDIのアップル向け売り上げ比率が5割を超え「iPhoneへの依存」を懸念する見方が広がっていた。サムスン電子は有機ELに今年8兆ウォン(7200億円)を投じ増産してアップル向けに供給する。アップルは17年からiPhoneに有機ELパネルを採用する方針だ。韓国LG電子も有機ELに1兆円規模の投資計画を発表している。
JDIは従来の液晶パネルが主力である。500億円を投下し、17年春に千葉県茂原工場内に有機ELラインを立ち上げるが、月産3000枚の試作段階だ。サムスンは月産最大18万枚を目指しているので、まったく勝負にならない。
さらにJDIは石川県白山市に1700億円を投じ、中小型液晶パネル工場を建設した。しかし、この白山工場が無用の長物になるかもしれないのだ。JDIが破綻すればアベノミクスの失敗の証明になる。だから衆議院議員選挙が取り沙汰されている年内は延命させるだろうが、資金繰りは毎月綱渡りだ。銀行から5月と6月にそれぞれ300億円、7月に150億円を短期で借り入れた。
JDIは14年の株式上場で1200億円を調達。自己資金は厚く、実質的な無借金会社だが、企業統治がゆるすぎて上場企業の体をなしていない。本間氏が経営責任を取り、一から出直すぐらいの覚悟が必要だ。トランプを切るようにシャッフルし、新JDIとして再スタートするのもひとつの選択肢だろう。