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「ここが売り時」と判断か
スズキは今回の富士重株式売却について、15年6月に東京証券取引所が上場企業に適用した保有株式に合理的な説明が求められる「コーポレートガバナンス・コード」(企業統治指針)に基づいて、株式の保有政策を明確にするためだとしている。ただ、コーポレートガバナンス・コードが適用されてから半年以上経過してからの売却決定に、「株式売却益を確定しておこうとの考えが透けて見える」(業界筋)との見方もある。
富士重は、北米での新車販売が毎年のように過去最高を記録しているのに加え、ここ数年続いた円安効果で業績も毎年、過去最高益を更新。これに伴って株価もうなぎ上りで「怖いぐらいの水準」(富士重・役員)にまで上昇した。しかし、年初からの急激な円高が業績を直撃、株価も急激に値を下げている。年初来高値は1月4日の5015円、それが8月8日には3852円にまで下落している。
スズキは今後も円高基調が続くと見ており、米国新車市場も成長鈍化が見込まれていることから、富士重の株式は「ここが売り時」と判断したと見られる。
一方、スズキが富士重株式を売却した8月9日、富士重は保有するスズキ株式578万株を市場で売却した。売却益は約90億円と、スズキの5分の1だ。16年前に投資した金額はともに100億円ながら、売却益では大きな差がつく結果となった。
独特のカンで変化の激しい自動車業界の荒波を乗り越えてきたスズキの鈴木会長が、「富士重の成長は限界」と判断したと見られる行動に出ただけに、富士重株式でキャピタルゲインを稼いできた投資家は神経を尖らせることになりそうだ。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)
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