1千万人の日本人が遊ぶポケモンGO、ゲーム嫌いの人もひたすらポケモンをゲットする理由
ポケモンGOがギネス世界記録を打ち立てた
スマートフォン(スマホ)ゲーム「ポケモンGO」が、以下の5つもの項目で世界一の記録を達成した。
(1)配信開始1カ月のダウンロード数が最多
(2)売上高1億ドルを最速で達成
(3)初月の売上高が最高
(4)初月売上高トップの国・地域数が最多
(5)初月ダウンロード人気で、ランキングトップを獲得の国・地域数が最多
このゲームは、米グーグルの社内ベンチャーとして設立後に独立したナイアンティックが、日本のゲーム企画会社ポケモン、任天堂と共同開発した。
仕組みはシンプルだ。街を歩くとスマホ画面に現れるポケモンに向かって、「モンスターボール」というボールを投げて捕まえるだけ。現実の世界にCGを重ねて表示する、AR(拡張現実)の技術を用いているため、実際の風景の中にポケモンが現れ、それを捕まえているように見える。捕まえたポケモンは、自分のリスト「ポケモン図鑑」に登録される。
捕まえるほどにポイントが加算され、自分のランクが上がったり、捕まえたポケモンを進化させることもできる。見知らぬ人とポケモンを戦わせることも可能だ。8月中旬時点でのダウンロード数は、世界で1億3000万。スタートからわずか約1カ月で、日本の総人口以上の人々がゲームを始めたことになる。世界中の人々を魅了するこのゲームには、人間の根源的な欲求を喚起するものがある。
日本でもすでに1000万ダウンロードを達成したと報じられているが、その仕組みを行動経済学の視点で見ると、人間心理を多様なかたちで巧みに突いていることがよくわかる。本稿では、それらを読み解くことで、世界的なヒット商品を生むためのヒントを得ていく。
損失回避のため、人々は“ゲット”し続ける
まずポケモンGOの最大の特徴は、スマホのGPS機能による位置情報を活用している点だ。
地図画面を表示したスマホ片手に街を歩けば、モンスターボールなどのアイテムを入手できる「ポケストップ」が、あちこちに見つかる。通りすがりにスマホをスワイプ&タップするだけで、もれなく(事前に何かはわからないが)アイテムがもらえる。一方、ポケモンは街中で突然現れる。家の近くにいることもあれば、旅先で見つけることもある。
とにかく歩いて、これらを探しさえすれば、自分のアイテムやポケモンが確実に増えていくのだ。この機会を無駄にすることは、心理的には「損得ゼロ」ではなく、「損」と判断される。