1千万人の日本人が遊ぶポケモンGO、ゲーム嫌いの人もひたすらポケモンをゲットする理由
人はとにかく損は避けようとする。行動経済学では、同じだけの損と得では「損をした悲しみ」が「得をした喜び」を越えることの発見等から、これを証明した。この心理は「損失回避性」と名付けられている。損失を避けようとする結果、プレーヤーは無意識のうちにポケモンやアイテムを入手し続けるのだ。
利用可能性ヒューリスティクスが、ポケGOを人々の楽しい記憶と結びつける
街中でポケモンをゲットする行動は、カブトムシやセミなどの昆虫を屋外で捕まえる行為に、かなり近い。スマホをスワイプしてモンスターボールを投げる微妙な難しさは、虫取り網を扱うかのようだ。
人は新しい物事を判断するときに、過去の記憶や体験をもとに判断する。行動経済学では、これを「利用可能性ヒューリスティクス」と呼ぶ。この心理により人々は、初めて体験したポケモンGOを、虫取りの楽しい記憶と重ねて判断し、実際以上に楽しいと感じる。サービス開始がちょうど夏休みと重なったことで、この効果は倍増したに違いない。
外を歩くゲームは、ゲーム嫌いの認知的不協和を解消する
もともと人間は、合理的に一貫性のある行動をしようとするものだ。もし矛盾が起きると、それを解消しようとする。行動経済学では、これを「認知的不協和」の解消と呼ぶ。今までスマホゲームをしなかった人の多くは、自分の世界に引きこもって、小さな画面を見つめる行動が不健康だと考えていた。ところがポケモンGOは、家の外に出て歩き、新しい場所を発見し、他の人と交流するゲームだ。実際にこのゲームをすることで、肥満や神経症が改善されたという報告もある。今までスマホゲームを避けていた人も、認知的不協和を起こすことなく始めることができる。
再認ヒューリスティクスとハロー効果で、ポケGO評価は大アップ
ゲームを始めたるきっかけとして、ポケモンという世界的な人気を誇るキャラクターの存在は大きい。「再認ヒューリスティクス」の心理が働くと、「よく知られているものは“良い”ものである」と判断される。企業が広告などで自社の認知を上げようとするのも、このためだ。
日本でのポケモンGO配信開始は7月22日だったが、米国、オーストラリア、ニュージーランドでは7月6日に、欧州やカナダなど30カ国以上でも続けて配信が開始されていた。世界中でさまざまな国の人々がポケモンGOを楽しむ様子は、テレビニュースなどで盛んに放映された。映画の宣伝文句ではないが、「全世界が遊んでいる!」とでも言いたくなる様子であった。