東京株式市場で海運株が買われた。鉱物資源などを運ぶバラ積み船の運賃市況を示すバルチック海運指数が11カ月ぶりの高値を付け、これを好感した買いが入った。バルチック海運指数は、2月の底値から9月7日の高値まで2.7倍に上昇。指数上昇の背景には、オーストラリアから中国への鉄鉱石の輸出増加がある。
海運株が買われた隠れた理由は、もうひとつある。韓国海運最大手の韓進海運が8月31日、日本の会社更生法に当たる法定管理の手続きをソウル中央地裁に申請し、事実上倒産した。ロイター通信によると、昨年末時点での負債総額は約5000億円。今後は、優良資産を現代商船に売却した後、清算される可能性があるという。
韓進海運は、原材料から精密部品、食料や雑貨など日常生活に必要な物資を運ぶコンテナ船が主力で、コンテナ船の積載能力ベースで世界8位。日本企業では、商船三井が世界10位、日本郵船が14位、川崎汽船が16位である。コンテナ船の供給が減り、コンテナ船の運賃も上昇した。
沈む船(海運会社)が出れば、浮かぶ船(ライバル会社)が出るのが世の常だ。ゼロサムゲームの世界ともいえよう。
この事態を受け、川崎汽船株が買われた。かつてM&Aコンサルティングなどから構成されていた投資ファンド(通称、村上ファンド)の出身者が新たに設立した投資ファンドであるエフィッシモ・キャピタル・マネージメントが、川崎汽船株の発行済み株式の36.2%を買い占めていた。その川崎汽船株が9月9日、一時、年初来高値の272円を付けた。年初来安値の168円(2月12日)の約1.6倍である。
しかし、株価の上昇は一時的なものとみておいたほうがいい。実は川崎汽船は韓進海運の倒産で打撃を被っているのだ。
韓進海運を含む5社でCKYHEアライアンス(共同運航)を組む川崎汽船は、自社で引き受けた貨物を韓進海運の船舶に積載している。そのため、韓進海運が倒産したことで、貨物の引き渡しがままならないのだ。
韓進海運が延滞している船舶賃貸料や港湾利用料、燃料油、コンテナリース料だけで630億円(1ウォン=0.09円で換算、以下同じ)に上る。そのため、世界各国の港が韓進海運の船の入港を拒否。いったん寄港すれば、債権者が船舶や燃料などを差し押さえるため、寄港もできない。韓進海運の船舶141隻のうち、9月4日時点で68隻が世界各地の沖合に漂ったままの宙ぶらりんの状態になっている。関係者によると、債権者に船を差し押さえられるのを逃れるため、意図的に入港を避けているとの批判が出ているという。