14年に義理の兄にあたる韓進財閥のトップ、趙亮鎬氏に韓進海運の経営を譲った。この趙亮鎬氏の娘が、“ナッツリターン事件”を起こした大韓航空元副社長の趙顕娥氏だ。客室乗務員からナッツを袋に入れたまま渡された趙顕娥氏が激怒し、大韓航空機を引き返させたとして世界を驚かせた事件だ。
趙亮鎬氏は、韓進海運に2年間に1000億円を投入したが、経営は好転しなかった。今年4月、趙亮鎬氏は韓進海運の経営権を放棄し、政府系金融機関を中心とした債権者団に自律協約(共同管理)を申請した。しかし、債権者国との交渉が暗礁に乗り上げ、韓進海運は破綻。趙亮鎬氏は37億円の私財を投じると発表したが、“手切れ金”と見られている。
韓進海運の倒産で、韓国メディアの批判の矛先は前会長の崔恩瑛氏に向けられている。退職金として9億円を受け取っていたことが明らかとなったからだ。韓進海運グループから優良企業を切り離し、自分が経営する企業に取り込んだ。韓進海運グループが入るビルを所有し、年間13億円の家賃収入を得ている。韓進海運が自律協約を申請するにあたって、保有していた韓進海運株式3億円相当を事前に売却し、一時はインサイダー取引の疑いで検察の捜査まで受けたと報じられている。
韓進海運が倒産したのは、崔恩瑛氏が経営のカジ取りを誤ったせいであるにもかかわらず、崔恩瑛氏は私財を投じないだけでなく一言の謝罪もないと、韓国メディアは批判する。
「水に落ちた犬は叩け」という韓国マスコミの遺伝子は今でも健在だ。ナッツリターン事件で趙顕娥氏を叩きまくったように、韓進海運の倒産事件では、敵前逃亡した崔恩瑛氏を血祭りにあげないと収まりがつかないのだろう。
新しいコンテナ船連合に韓進の参加は困難か
日本船主協会の工藤泰三会長(日本郵船会長)は9月28日の記者会見で、韓進海運と日本の海運会社の共同運航は難しい、と述べた。
日本郵船など日本の海運会社3社は、17年4月にコンテナ船を共同運航する新しい連合(ザ・アライアンス)を結成することになっており、当初は韓進海運も参加することになっていた。
来春に共同運航を始めるには年内にも航路やスケジュールを決める必要があるが、経営破綻した韓進は再建の方向性さえ固まっていない。信用力が落ちた海運会社が加わると、オペレーションが困難になるといわれている。
ザ・アライアンスには日本の3社のほか、独のハパックロイドや台湾の陽明海運が参加する。ハパックロイドは7月にクウェートの海運会社と合併することで合意した。
工藤会長は「韓進が抜けても、新連合は2割の世界シェアを維持できる。サービスに影響は出ない」と見通しを語った。
(文=編集部)