廃線後、事態は劇的に改善するのか
JR北海道は単独維持が困難な路線について、バスへの転換、あるいは列車の運行をJRが受け持ち、車両や施設の保有・維持は自治体という「上下分離方式」を自治体側に提案するとみられている。しかし財政難に悩む沿線自治体が、上下分離方式を受け入れるのは困難だ。バスへの転換となれば、冬場の大雪や道路凍結など運行上のリスクが浮上する。
分割民営化から30年。地方のローカル線、なかでも冬場の厳しい気象条件を抱えるJR北海道の経営難は、当初から予想されていた。だからこそ6822億円もの経営安定基金が設置されたのだ。しかし、合理化と路線縮小だけでは問題の抜本的な解決にはならない。
「鉄道という公共インフラだけの議論をしても意味がありません。経営や経済合理性だけを考えれば、極端な話をすれば収益が出ている札幌圏に特化してしまえばいいということになってしまいます。仮に路線が残ったとしても、沿線地域の活性化策を打ち出さなければ利用状況は好転しません。
北海道には山、海、川、酪農地帯、温泉など豊かな大自然があり、世界有数の観光資源ですが、いまだに周遊的な観光が中心です。たとえば、(1)シニア世代を中心とした長期滞在型の施設をつくり、鉄道とリンクさせる。(2)ローカル線の駅から通える範囲に学費の安い大学や酪農、農業訓練施設を設置し、大自然の中で学ぶ環境を整える。(3)さらにはIT拠点をつくる――。このような北海道ならではの施策を官民一体となって考えていくべきでしょう」(同)
現在、運休になっている日高本線は、太平洋の海岸線沿いを走り、沿線にはサラブレッド牧場が続くほか、静内、新冠、襟裳岬、門別競馬場といった魅力的なスポットも多い。新千歳空港から直行する快適な列車を運行すれば、外国人観光客を呼び込むことができるのではないだろうか。
赤字ローカル線を切り捨てるだけでは、問題の解決にはつながらない。問われているのは、北海道そのものの活性化なのである。
(文=編集部)