ディズニーR、連続大幅値上げの裏で負債激減…体験価値向上のため5千億投資の大博打
次に21年以降の方針ですが、「年間500億円規模の投資を継続」するという内容でした。単純計算するならば、向こう10年で5000億円になります。これは相当なスケールで、TDRを質・量ともに拡充させる投資活動です。
変化2:3年連続の値上げ
いっぽう、今年4月よりTDRの価格が改訂されました。実に3年連続の値上げです。主なものを挙げると次表のとおりになりますが、この3年でかなりはっきりとした大幅値上げが行われたことがわかります。
TDR側の説明によれば、過去1年間でゲストの「体験価値」が向上したこと、そして今後のパーク開発のために、値上げを行うとしています。要するに、サービスの内容が向上し、さらに今後も向上させることを予定しているので、それに見合った価格体系を採用したと解釈することができます。
当然のことながら、この値上げの背景には、前述の投資活動が大いに関係していると考えられます。具体的には、総額で5000億円もの投資を行うためには、その財源を確保しなければいけません。そのためにも、ある程度の値上げを行うことは避けて通れないとオリエンタルランドの経営陣が判断した可能性があります。
もちろん、値上げは多くの顧客には不評です。しかし、あえてそれやってのけるということに、価格が上がる以上にサービス内容(体験価値)を向上させるという、TDRの強い意思が感じられます。
オリエンタルランドの懐事情
ところで、そのオリエンタルランドの懐事情はどうなっているでしょうか。筆者は、過去10年における同社の「ネット有利子負債」を計算してみました。
ネット有利子負債とは、有利子負債から、現金や預金、短期有価証券などすぐに換金できる資産を差し引いた正味の有利子負債のことです。有利子負債を多く抱える企業でも、手元資金を厚めに持っていれば、必ずしも財務体質が悪いとはいえません。そして、この値が小さければ小さいほど資金に余裕があることがわかります。その結果は、以下のとおりでした。
この10年のうちに、オリエンタルランドは1501億円あったネット有利子負債をマイナス1850億円にまで減少させました。じつに3351億円もの減少です。この財務力の改善は、このさき10年のうちに行われる5000億円もの投資の原資となりうるものです。そのなかでも、値上げが行われた14年3月期以降の2年間だけでも、1134億円もネット有利子負債が減少していることは刮目に値します。