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永濱利廣「“バイアスを排除した”経済の見方」

日本経済、深刻な負のスパイラル突入の兆候…移民拡大による労働力確保&納税増が不可欠

文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト
日本経済、深刻な負のスパイラル突入の兆候…移民拡大による労働力確保&納税増が不可欠の画像1首相官邸HPより

 今後、業績の拡大が期待できそうな業界、期待しにくい業界を占うために、まずは足元の経済環境を整理しておこう。まず認識すべきは、当面は国内より、海外要因の影響を大きく受けるということである。

 米国の大統領選は世界経済に影響するビッグイベントだが、それより早く、大きなインパクトになったのが、ブリグジット、英国のEU離脱だ。これにより、株価の大幅下落や円の急伸と、金融市場は大きく動揺した。具体的な交渉はこれからということもあり、今は落ち着きを見せているものの、英国は日本企業にとって欧州における拠点であり、日本企業の進出先としてはアメリカに次ぐ数となっている。

 EU域内でのビジネスにおいて英国に拠点を持つことはメリットが大きかったが、それがなくなることを踏まえ、移転を検討すべきか、ではどこに拠点を移すべきか、英国に追随する国もあるのではないかと、先行きには多くの不透明な要素がある。しばらく、日本企業は混乱が続くとみられる。

 円の急騰も企業業績にかなりのダメージがある。日本企業はおおよそ105円前後を想定レート(対米ドル)としているが、9月13日現在の為替レートは101円台と、想定レートから大きく円高に振れている。アベノミクスでは金融緩和によって円安を誘発し、輸出企業が業績を伸ばしてきたが、円高によって利益が大きく削られる。円高はインバウンドにも逆風であり、円高になるほど、海外からの旅行者は負担が重くなり、旅行者数にも影響するし、爆買いも期待しにくくなる。

東京オリンピック効果

 では、プラスの材料はないのか。

 4年後に迫った東京オリンピックは、明らかにプラス材料である。1984年のロサンゼルス大会以降に先進国で開催されたオリンピックでは、開催が決まってから7年間の経済成長率はその前の7年間に比べて年平均0.3%押し上げられている。ブラジルは景気が冷え込んでいるという声も聞こえるが、オリンピックがなければさらに状態は悪かったのである。

 東京オリンピックの経済効果は3兆円と推計されているが、インフラなど含めれば生産誘発額は13兆円程度が見込まれる。最も成長率が高くなるのは開催の前の年であり、今から3年後の2019年ということになる。そこをピークに、開催の年には息切れするのが通例で、20年には前年比で成長率が下がると予想される。

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

1995年早稲田大学理工学部工業経営学科卒。2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年第一生命保険入社。98年日本経済研究センター出向。2000年4月第一生命経済研究所経済調査部。16年4月より現職。総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事、跡見学園女子大学非常勤講師、国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、あしぎん総合研究所客員研究員、あしかが輝き大使、佐野ふるさと特使、NPO法人ふるさとテレビ顧問。
第一生命経済研究所の公式サイトより

Twitter:@zubizac

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