中国政府は16年末を減税の期限としているが、延長されるかどうか方針はまだ示されていない。もし延長されれば、17年の販売台数も7%程度増えると考えられている。
こうした対策のなかでも、住宅価格の動向には注意が必要だ。中国では、2軒目以降の住宅購入の頭金比率の引き上げなど、投機抑制のための規制が強化されている。それでも投機熱は収まっていない。相場が熱狂に浸っているうちは、先行きへの懸念は抑えられるかもしれない。しかし、さらなる規制強化が実施されれば、住宅市場が急速に悪化する恐れがある。
その場合、バブル崩壊後の日本が直面したように、担保価値が下落し、不良債権が増加するという展開が想定される。そうなると、中国経済の先行き懸念は高まり、世界経済にもマイナスの影響が及ぶだろう。
今後の中国経済の展望
過剰な生産能力が残るなか、中国の下振れリスクは意識されやすい。当面は、減税やインフラ開発が経済を支え、6%程度の経済成長率が維持される可能性はある。
問題は中長期的に中国経済の構造改革が進み、消費中心の成長基盤が整備できるかだ。そのためには、中国の製造業の競争力が引き上げられ、主要先進国と互角に対抗できるだけの産業基盤を整備する必要がある。
需要を刺激するためには、人々がほしいと思うモノを創造する力が欠かせない。それをつけるには、生産性の落ちた設備などを淘汰し、新規産業、新興企業に資本や労働力を移し、活動を支えることが重要だ。
では、中国は自力で創造的破壊(イノベーション)を進められるか。これまで中国は先進国の技術やノウハウを模倣してきた。独フォルクスワーゲンの自動車工場の誘致、海外企業の買収はその例だ。それでも「Made in China」の新しい技術や製品コンセプトを世界に示す力は十分に備わっていないようだ。
そして、9月の輸出に関する政府の見解では、先進国は技術力を要する工程を中国から自国に戻していることが示された。また、日米の市場で中国製品のシェアが低下し、東南アジアの製品のシェアが伸びているとも記されている。
これを額面どおりに受け止めると、先進国の企業は、付加価値を生み出す基礎研究や技術開発は国内を拠点に強化している。そして、中国で行ってきた完成品の組み立て工程を他のアジア新興国に移管しつつあるということになる。その背景には、経済成長や高齢化の進展に伴い中国の人件費が上昇していることがある。