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米大統領選・サウジ危機・中国急減速の3大衝撃が同時到来…世界経済混乱の兆候

文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授
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簡単ではない減産合意への道

 それでも、減産は容易には進まないだろう。通常、OPECは総会の前に各国間の意見を調整する会合を開き、そこでの結論を総会で承認する。今回も11月30日の総会までに、OPECは大方の合意を取り付けようとしている。しかし、10月28、29日、ロシアやブラジル、メキシコなどの非加盟国も招き開催された専門家会合では、減産に関する意見の調整が進まなかった。

 これが示唆するのは、9月の臨時総会で決定された減産目標が画餅だったということだ。ISとの戦闘で国土が疲弊しているイラクも特別措置の適用を求めている。このように、多くの国が減産の負担を避けようとし始めている。唯一、サウジアラビアの立場に近いとみられるロシアでさえ、減産よりも現生産量での据え置きを望んでいるようだ。「減産したいならお一人でどうぞ」というのが多くの産油国の本音だろう。

 OPEC内で減産への合意が得られない場合、自らが呼びかけた減産目標の大半をサウジアラビアが負担することになりそうだ。結果的にサウジアラビアはさらなる苦境に直面する可能性がある。こうした見方から10月下旬以降、原油先物価格は下落し、11月上旬には1バレルあたり44ドル台をつけた。11月末の総会の前にも専門家による会合が開催される予定だ。ここで意見がまとまらないと追加的に原油価格は下落するだろう。

 世界経済を見渡すと、中国の経済成長率の鈍化により、世界的に需要は供給を下回っている。そのなかで原油価格が下がり始めると、まず、産油国の経済環境は追加的に悪化する。中東産油国の金融システム不安、財政懸念は意識されやすくなるだろう。そうなると、再度、産油国のソブリンウェルスファンド(国富ファンド)は保有資産の売却を進め、財政資金の確保に動かざるを得ないだろう。それは、主要国の株式市場の下落リスクにつながると考えたほうがよい。大統領選挙後の米国の政治不透明感から投資家心理が神経質になるなか、原油価格の動向次第で世界の金融市場がリスクオフに向かい、不安定な動きが広がる可能性があることには注意が必要だ。
(文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授)

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