PIFは1971年の設立。サウジ財務省が管轄してきたが、2015年3月からはムハンマド副皇太子が率いる経済・開発問題協議会(CEDA)へ移管された。
副皇太子が打ち出したサウジの長期戦略「ビジョン2030」は、原油とガスが2本柱のサウジ経済に新たな柱を創り、現在、世界19位の経済規模を30年までに世界15位に引き上げるというものだ。
PIFは世界最大の石油埋蔵量と生産量を誇る国営石油会社、サウジ・アラムコの株式を保有しており、アラムコは株式上場を視野に入れている。IPO(新規株式公開)した場合の時価総額は世界首位の米アップル(約61兆円)を軽くしのぎ、2兆ドル(約210兆円)になると試算されている。売り出される株式は5%未満とされるが、それでも1000億ドル(約10兆円)。PIFはアラムコ株の売却で、SVFに拠出する資金を捻出する。
ムハンマド副皇太子の訪日に同行したファリハ・エネルギー産業鉱物・資源相は、サウジ・アラムコの新規株式公開先について、東京証券取引所を考えていることを明らかにした。日本の投資家や株式市場関係者は東証に上場することを期待している。
時価総額でアップルを抜く野望
孫氏は、ニュースリリースで「(SVFは)今後10年でテクノロジー分野において最大級のプレーヤーとなることでしょう。われわれは、出資先のテクノロジー企業の発展に寄与することで、情報革命をさらに加速させていきます」と述べている。
ソフトバンクグループは9月に3.3兆円強を投じ英半導体設計会社、アーム・ホールディングスを買収し、あらゆるモノがネットワークでつながるIoT(モノのインターネット)分野で攻勢をかける。
IoTには通信用の半導体が不可欠だ。IoTを制するためにアームを買収した。アームは全世界のスマートフォン(スマホ)に半導体を供給している。世界最高の時価総額を誇るアップルでさえも、アームから半導体の供給を受けている。アームの半導体をIoTのデファクトスタンダード(事実上の標準)にするための投資は、これから膨らむ。サウジと手を組んでファンドを立ち上げた理由がここにある。
米国では、グーグルやインテルなどシリコンバレーのIT企業が新興企業へ積極投資を続けている。米国に中国、日本、欧州を加えた主要4カ国・地域の2015年のベンチャー投資額は10兆円。ソフトバンクが設立するファンドは、その実績に匹敵する規模になる。