今回の自治体による丸投げである長期包括契約は、これまで自治体が行ってきたごみの処理を、民間の営利企業に委ねるという大転換を含んでいる。そのことによって、環境汚染や住民の健康を守るということに対処できるのであろうか。かなり根本的な論議が必要になると考えられる。
人間の営みのなかでごみ・廃棄物の処理は、衣食住や経済活動の結果として必ず生み出されるものであり、下水処理と並んで大きな役割を持つ。ごみ処理場は、プラスティック焼却によるダイオキシンなど有害化学物質や重金属を煙突から放出し、PM2.5なども排出する特定迷惑施設である。大気汚染防止法やダイオキシン類対策特措法上等の定めによって、定期的な測定を行い、環境への影響を防止する義務を負っている施設である。
したがって、自分の住み家のそばに焼却炉があればよいと歓迎する人はいない。ごみの処理は社会にとって必要不可欠でありながら、ごみの焼却や埋め立て処分による環境や健康への影響は、極力少なくする努力が欠かせない施設である。自治体が存在する主要目的は、住民の安全と健康の維持であり、一方、民間企業のそれは商品の開発、生産、販売、そしてサービスによって社会的な役割を果たすと同時に、企業体の存続を図ることにある。
自治体の場合、環境や住民の健康に影響を与える問題に直面した時には、採算を度外視して事に当たることが求められ、またそのような役割を持っている。その点で営利企業体とは異なる。
迷惑施設として周辺の住民に配慮しながら運営されてきたごみ処理を、民間企業に丸投げすることが法令的に可能なのか。また、そのことで住民を守ることができるのか。公害防止や環境保全の点で大きな役割を持つ自治体が空洞化することがないのか、問われている。
もう一点、廃棄物処理法では、家庭や地域の小規模事業者から排出される一般ごみは、市町村が自ら計画を立て、その計画に基づきごみ処理を行うことが定められている。つまり、ごみの処理は、社会的に必要不可欠ではあるが、その処理施設(焼却や埋め立て)周辺の住民に迷惑を与えるものなので、そのことを極力少なくするための不断の努力について、「ごみの減量化に向けての計画を立て、その計画に基づき実施すること」と定めている。地域の一般ごみの処理の役割は、その市区町村、基礎自治体の役割としている。